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 この号が出るころにはもう第1回目が放送されていますけど、NHK Eテレで『今君電話』という番組をやらせてもらいました。これはどういう番組かというと、僕のSNSで「電話で話を聞きます」と電話番号を公開して、かけてきてくれた人と話すというドキュメンタリーです。そもそものきっかけというのが、ライブ『放送禁止』の舞台上で同じような企画をやったからなんですね。もう、5、6年前かな。それは「1ヵ月Twitter炎上生活」という企画の一環で、僕の携帯に電話をかけてきた人と舞台上で話すというものだったんですけど、それをNHKのディレクターが知っていてくれて、「竹山さん、あの企画のちょっと真面目なやつをやりませんか?」と声をかけてくれたんです。ちなみに、そのときの携帯はまだ契約していて、ときどき『土曜The NIGHT』でも使っているんですよ。何かしゃべりたい人、電話かけてきてって。Eテレの番組はもう収録していて、電話をかけてくる人も内容もいろいろでした。回線が1つしかないから、相当つながりづらかったとは思うんだけど、混乱とか冷やかしとかはなかったですね。

 会社のこと、子供のこと、夫婦のこと、病気のこと、雑談みたいな軽いものから深刻なものまで、本当、内容はなんでもです。電話で顔が見えないというのもあるんでしょうけど、向こうからしたら僕のことはテレビで見て知っているから、話しやすいんでしょうね。誰にも話していないことをしゃべってくれたりしました。ただ、この番組、いわゆる悩みを解決していく番組ではないんです。相手が話している内容に対して、こちらは意見を言っちゃいけない。実は収録にあたって、僕、授業を受けているんですよ。成蹊大学の教授で「いのちの電話」のスタッフでもある臨床心理士の岩田淳子先生という方がいるんですけど、この岩田先生の90分間の授業を計10回、今年の春からずっとリモートで受けていました。その岩田先生に言わせると、よくある芸能人の相談企画は全部0点だそうなんですね。「こうしたほうがいい」とか「ああしてみたら」なんて、言っちゃだめ。それはあなた個人の意見で、自分が気持ちよくなっているだけだから、と。電話をかけてくる人って、明確な答えを求めているわけじゃない人がほとんどなんです。

 だから、僕が番組で相手の悩みに対して答えを返したら、それは竹山の意見を言っているだけになってしまう。僕はけっこうそういうこと言いがちだからドキッとしてしまって。良いことなんて言わなくていいんです。名言なんか吐いちゃだめ。あくまで「ただ話を聞きます」というスタンスじゃないと、相手のことを考えているとは言えないんだと。とはいえ、テレビ的に成り立つのかな? とも思ったので、どう見せるのかという部分は、最初の段階でそのディレクターと何度も打ち合わせをしました。

 1回目の収録を終えて、間違った対応をしていなかったか確認したかったし、2回目の収録も予定されていたので、収録したVTRを岩田先生に見てもらったんです。そうしたら、それぞれの内容について指摘していただきまして、お叱りを受けたものもありました。ある悩みに対して、僕が「ネット上にはそういうコミュニティとかもあるから、同じ境遇の人を探して、しゃべってみるのもいいかもよ」と答えてしまったんですね。まずは、話を聞くことが大事。相手の気持ちを掘り下げてあげることで、心理的にすっきりするし、その人自身が問題点を認識して解決につながる場合もある。この場合は、僕が「こうしたら?」とアドバイスしたことによって、相手に偏りを与えてしまうことになると指摘を受けて、ああ、たしかにそうだなと反省しました。

 難しかったですけど、いろいろな人としゃべれるのはとても面白かったですね。不思議とわかってきたのは、人ってみんなしゃべりたいということ。家族や友達にも言えない話って意外とみんな持っていて、それを吐き出したいという思いもある。だから、匿名で話せるこういう番組に多くの人が電話をかけてくれるんだと思います。SNSにも書きましたけど、まずEテレの番組であることを説明して、あとは僕がなんて呼べばいいか決めてもらうだけ。ラジオネーム的なものでいいんです。その上で好きなこと、話したいことをしゃべってもらう。コロナ禍で人と会えない時代だからこその企画でもあると思うんですよね。

カンニング竹山

カンニング竹山 芸人。福岡県出身。テレビでは、『バイキングMORE』『ノンストップ!』(共にフジテレビ)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『カンニング竹山のイチバン研究所』(MXテレビ)など、ラジオは『たまむすび』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。従来の「竹山報道局」など、さまざまなコンテンツを楽しめる動画配信サービス「TAKEFLIX」を展開中。

 あと、近況でいえば、ライブ『放送禁止2021』も無事に終わりました。毎年のことなんですけど、2~3週間くらい稽古場に通い詰めて、半分寝ながら練習していました(笑)。中野サンプラザに見に来てくれた人も、配信で見てくれた人もいると思いますけど、1日しかできなかったのはちょっともったいなかったですね。ただ、来年はもう普通に戻すと思います。小屋の規模もこれまでの大きさに戻すと思いますし、公演も4~5日くらいはやるのかな。今は終わったばかりであれですけど、そのへんもまたいろいろ告知していくので、来年も楽しみにしていてください。

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