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 昔は、趣味といえるのは、それこそ夜酒を飲むことぐらいでしたね。僕の仕事は、仕事そのものが遊びだから、仕事を趣味だと思ってやっていたけど、やっぱり苦しかったりもするわけです。
 バラエティの現場では、失敗したら次から呼ばれないというシビアなことになってくる。テレビは素人の方も多く出ているけど、実はその人たちをバックアップする芸を持った人が周りにいないと見ていられない。僕はそれを「テレビ芸」と言っているんですけど、芸人はそのテレビ芸をどれくらいできるかってことになってくると思うんですよね。でも、それは後輩でも長けているヤツがごまんと出てきてますから決してラクではない。そういうこと考えていると、遊びだと思っても遊びじゃないということになってくる。それについては、3~4年前くらいに結構悩みましたね。
 仕事が一番の趣味みたいなものだから、これを常に楽しく回さなきゃいけないと思って、ずっと悩みながら、もがきながら、ただただ夜に後輩たちと飲んだり……長い間そうやってきました。

 そうやってずっと揺らいでいるなかで、「このやり方は違うな」と気づかせてくれた人が二人いたんです。
 一人目は堺正章さん。ある番組の収録で、本番前にセット裏にいると、堺さんが「竹山くん、忙しいでしょう」と言ってきて、「まあ何とかやらしてもらってます」みたいな話をしてたら、堺さんが「今こういう生活だろ。テレビは出てる、でも若いときみたいに、もっと出たいというのもなくなった。俺はいつも何やってんだろう。将来どうなるんだろう、ともがきながら仕事をしてないかい?」と言われて。まさにその通りだったんです。「なんでわかるんですか」と聞いたら「僕もそうだった」って言われて。40中盤ぐらいでバリバリテレビで働いていると、そういう時期が来ると。
 そこで、「先生、そういうとき、どうすりゃいいんですか」って聞いたら、「遊ぶんだよ」って言われて。それで、「遊ぶってどんな遊びを?」とさらに聞いたら「後輩とか、芸人とか、表方の人、そことばっかり遊ぶのをやめるんだよ。いろんな人達と遊んだりすると、自分の見識以外をいっぱい学べて、それが後々の50歳、60歳の芸能人生につながるんだ」って言われたんです。
















 堺さんのその話を聞いてしばらく経ってから、木梨憲武さんにも可愛がってもらうようになって。憲武さんを見ていると、「遊びは遊び、仕事は仕事」というよりも、まさに「生きていることが全部遊び、遊びから仕事にする」。何か面白いことをできないかなって常に考えていて、思いついたら番組やイベントにするとか……堺さんが言っていたこととよく似ているなと思ったんです。
 憲武さんの周りも芸能界の人はそんなにいなくて、いつも飲んでいる人は帽子屋さんだったり、鞄屋さんだったり、電気工事の兄ちゃんとか。タレントはヒロミさんと藤井フミヤさんと俺くらい。あとは全部一般の方。

 そういう意味では、ここ一年くらいで一番といっていいほど一緒にいるのも憲武さん。あとは仕事の流れで、それこそザキヤマ(山崎弘也)とか。同じくらいの世代の芸人と飲みに行くときもありますけど、そんなに毎回ってわけじゃない。
 憲武さんは『みなさんのおかげでした』は終わったけど、やっぱり忙しいですね。それでも多いときには週3回ほど一緒に飲みます。夜は憲武さんもどっかでご飯食べたりするんで、そこに合流したりとか。
 でも、みんな僕の10歳ぐらい上の人たちばっかりだから、けっこう時間が早い。5時半~6時スタートの10時半門限みたいな(笑)。遅くても12時ですね。で、次の日、皆さん朝5時から起きているみたいで、健康的だと思いますよ。

 趣味と言っていいかわからないけど、今、一番楽しいのは、番組を作っているときですね。仲のいいディレクターとプロデューサーとおもしろいことできないかって飲みながら会議しているうちに「YouTubeやるか」ってなったんです。
 そこで考えたのは「地方局で自分の番組をやりたい」という目的で始めて、実現したらその地方局のカメラが僕を映し、YouTubeのカメラもその番組の模様を映す。さらにもう一局、系列ではない別の地方局もそれを映すというトリプルコラボ。お金も3人で出し合いながらやりました。宿泊のお金とか食事とかは僕が全部出したけど、編集費は2人がタダで持ってくれて。それは楽しかったですね。

カンニング竹山

カンニング竹山 芸人。福岡県出身。テレビでは、『直撃LIVE グッディ!』『ノンストップ!』(共にフジテレビ)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『ビビット』(TBS)など、ラジオは『たまむすび』(TBSラジオ)にレギュラー出演中。

 20代なんかは特に「いつかやりたい……でも今の自分にやれるのかな」ということがいっぱいあると思うんですよ。でもそれは、小さな扉を一つ開いてあげると、意外と一気に広がるようになる。
 あるとき、ロッククライミングが趣味の女性と話をしたときに、「なにがきっかけで始めたんですか?」と聞いたら、「前からやりたくて1回勇気を出して見に行ったら、『やってみたら?』と言われて、やってみたのがきっかけです」って言っていました。
 でも、きっかけって、皆そんなもんだと思うんですよね。用意周到に「よしやろう」と趣味を始める人って、そんなにいない。趣味なので、嫌だったらやめればいい。とりあえず1回やってみるのが一番大切かもしれないですね。

『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねぇかよ!~福島に20回、楽しい社会科見学に行った結果、わかったコト。』(KKベストセラーズ)カンニング竹山が福島県を取材して見てきたこと、感じたことを嘘偽りなくありのまま綴った体験記。福島のグルメや温泉なども紹介。

撮影/橋本直貴 構成/大塩 大
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