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葵わかな

葵わかな

撮影/Jan Buus
取材・文/中村千晶

葵わかな

葵わかな

「どう動けばいいですか?」「手はこうしたほうがいいですか?」――
撮影時、カメラマンに真剣な表情で向き合う様子が印象的だった。大きな瞳に薔薇色のほお。愛くるしいルックスの芯に、物事にまっすぐな姿勢がのぞく。

「よく『マジメだね』『しっかりしてるね』って言われます。どうなんでしょう? そういうふうに見せるのがうまいのかも(笑)」

 そう言って、ふふふと笑う。2018年に20歳を迎えたばかりだ。

「同世代の中には『まだ20歳になりたくない』って言う人もいるんですよね。でも私は『ようやく20歳だ』って思ったんです。ずっと自分の年齢が足りないせいで、求められているものをちゃんと返せなかったんじゃないか、という思いがあったから」

葵わかな

 小学5年のときにスカウトされて芸能界入り。遡ると、転機は中学2年。映画『陽だまりの彼女』でスクリーンデビューしたときだという。

「演技のことを何もわかってない私に、監督やスタッフさんが本当に親切に根気強く教えてくださった。でも、やっているときは沼にズブズブはまっていくような感じでした」

 身動きが取れないし、うまく息も吸えない。どうすればいいのか悩み続けた。それでも言われるままに懸命に演じ、出来上がった作品を観て「そうか」と思った。

「そうやって『悩んでいること』自体が大事だったんだ、とわかったというか。自分の中に深く潜って考え抜いたからこそ、終わったときにすごく達成感があったし、演じることが好きなんだ、ともわかった。この体験があったから、お芝居を続けてこれたのかなと思います」

 2019年はミュージカルに挑戦する。『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役だ。

「大好きな作品で憧れていた役なので幸せです。歌の練習は自主的に進めていて、今ちょうどジュリエットが歌う全曲をさらえたところです」

 自分なりの解釈のジュリエットを作ってみたいという。

「ジュリエットってロミオと出会って毒薬を飲むまで3日間なんです。情熱的すぎるとも思うけど、16歳という年齢も関係しているのかなと思います。たしかに私も子どものころは“運命の恋”を無条件に信じていました。私もけっこう夢見がちなタイプなので(笑)、そういう部分は理解できる。でも、自分で死を選ぶということは愛だけじゃなく、外的要素もあったんじゃないかと思うんです。家族間の問題とか、当時のお家事情とか」

葵わかな

 ジュリエットのように人を愛することはできそうだろうか?

「いや~、私はもうちょっと冷静なので(笑)。でも、万が一自分の猫に何かあったりしたら、けっこうがんばって戦うかもしれない。ロミオを猫に置き換えるのも変ですけど(笑)」

 大の猫好き。プライベートは意外にも(失礼!)アクティブらしい。

「海外旅行に行ったり、ジムで加圧トレーニングを始めたり。運転免許も取りました。昨年は映画のナレーションや音声ガイドに挑戦して、お芝居とはまた違う新鮮な発見もあったんです。私はまだまだ役者としても、一人の人間としても未熟。でも『これはできない』なんて決めつけずに、仕事でもプライベートでもいろんなことにチャレンジしたい。そうやって吸収したことが、お芝居に還元できる気がします。2019年も止まらず、興味あることに飛びこんでいきたいです」

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
2月23日(土)~4月14日(日)
シェイクスピアの不朽の名作をミュージカル化。イタリアの街・ヴェローナを舞台に、諍いを続けるモンタギュー家とキャピュレット家の子どもたち、ロミオとジュリエットの悲恋を描く。出演は、古川雄大/大野拓朗(Wキャスト)、葵わかな/木下晴香/生田絵梨花(トリプルキャスト)ほか
http://romeo-juliette.com/

葵わかな あおいわかな 女優。1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。2009年に芸能界デビュー。2017年NHK連続テレビ小説『わろてんか』でヒロインの北村てん役を演じる。2019年には公開中の映画『劇場版 ダーウィンが来た!アフリカ新伝説』でナレーションを担当。2月9日(土)よりBunkamuraザ・ミュージアムで開催「クマのプーさん展」の音声ガイドを務めるほか、2月23日(土)からスタートするミュージカル『ロミオ&ジュリエット』にジュリエット役で出演。

撮影/Jan Buus  取材・文/中村千晶

ヘアメイク/石川奈緒記 スタイリング/岡本純子