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LiLiCo

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撮影/Jan Buus
取材・文/青木孝司

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 18歳の時に、スウェーデンから祖母が住んでいた日本にやってきたLiLiCo。20歳の頃には演歌歌手として活動していた。

「19歳でデビューしたので、1年目ですね。日本の成人式には行ってないですけど、スナックのママさんや、応援してくださってる方たちのところへ着物を着てあいさつには行きました。当時は同じ事務所の演歌歌手の付き人をしながら歌ってましたけど、自分は絶対に売れるっていう根拠のない自信はありましたね。どんな職業をやっていても、その気持ちがなかったら絶対に続かないですよ。自信を持つことはすごく大事だと思います。でも、それを自分から偉そうに口に出してはダメ。そうやって消えていった人をたくさん見てきましたから。そこは謙虚な姿勢を持っていないと。もちろん頑張るのは自分ですけど、それを支えてくれて、仕事をくださるのは周りの大人たちですからね」

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 車中生活まで経験したほどの歌手時代だったが、夢をあきらめずに続けてきたことで、今年、芸能活動30周年を迎えることになった。

「これはいつも言ってることなんですけど、何ごとも20年続けないと頑張ったうちに入らないと思うんですよ。20年やると物事が一周していろんなことが見えてくる。私も仕事がうまくいくようになったのは40歳を過ぎてからですよ。“20歳は大人のゼロ歳”って、本当にその通り! 若い頃は『歌しかやりません』なんて思ってましたけど、そういう自分の軸を持って頑張っていると、ある時に別の扉が開くこともある。私にとってはそれが映画コメンテーターという仕事だったわけですけど、おかげで今では歌の世界にも戻れて、年に何本もライブをやってますから。かたくなに『自分はこれしかやらない』じゃなくて、柔軟に考えることも必要なんじゃないかなと思います」

 周囲の人々との縁にも恵まれたことももちろんだが、自らの力でチャンスを切り開いてきた彼女だけに、その言葉には説得力がある。

「私にとっての『王様のブランチ』みたいに、神様が持ってきてくれるチャンスは人生で2回くらいしかないと思います。あとのチャンスは自分で切り開かないと。やりたいことに向かって、自分はどうしたらいいのか現実も見て、一歩ずつ階段を上がっていくことが大事。今の時代、あちこちにチャンスはありますから。テレビもBSにCS、ネットテレビとあって、地上波にこだわらなければ明日にもレギュラーになれる可能性がある。ここにあるペットボトルのお茶や水だって、何種類出てます? その数だけラベルのデザイナーになるチャンスがあるわけですよね。そんな時代に20歳になる人なんて、うらやましいですよ。私も今の自分のままで20歳に戻りたいくらいです(笑)」

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 そんな彼女に、20歳の若者たちへのメッセージを尋ねてみる。

「自分の人生は自分で演出しようよっていうことですかね。そんな中でも大事なのは大人を馬鹿にしないこと。私たちは20歳の頃を1度経験してるので、いろいろ言えるわけですからね。そういう意味で年上の友だちを作ることはすごくいいことだと思います。私も60歳や70歳くらいの素敵な年上の人たちから学ぶことは多いですよ。冗談半分で言ってますけど、私は昭和のやり方で平成を勝ち抜きましたから(笑)。古いやり方が勝つこともあるんじゃないかと思います。ネットショッピングの時代だからこそ、訪問販売で頑張ってみるとか。成功した大人ばかりではないかも知れないですけど、失敗談から学べることも多いし、1回失敗したほうがいいですね。若いうちに失敗して、いっぱい悩んでください。そしたら、その悩みの解決方法も覚えますから」

LiLiCo リリコ 映画コメンテーター、歌手。1970年生まれ、スウェーデン・ストックホルム出身。18歳で来日し、1989年から芸能活動を開始。『王様のブランチ』(TBS系)では映画コーナーを担当。『ノンストップ!』(フジテレビ系)や『ALL GOOD FRIDAY』(J-WAVE)にレギュラー出演。他にも、雑誌連載や歌手活動、プロレスへの参加など、幅広く活躍中。また、自身が選んだ北欧輸入雑貨を扱うセレクトショップ「LiLiCoCo(リリココ)」を展開。http://lilicoco.jp

撮影/Jan Buus 取材・文/青木孝司