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小西桜子

小西桜子

撮影/Jan Buus
取材・文/中村千晶

小西桜子

小西桜子

 3千人を超える応募者の中から、『初恋』のヒロイン・モニカ役を勝ち取った小西桜子さん。武骨なヤクザたちに囲まれながら、壊れそうにはかなく、可憐な演技を披露している。

「お芝居の経験も浅いし、自分でも訳が分からないまま演じながら、ややパニック状態でもありました。『死ぬ気でがんばろう』という気持ちだったので、そこにモニカと通じるところがあったのかもしれません」

 三池崇史監督からは役を委ねてもらえたという。

「監督は優しかったです。ちょっと怖いときもありましたけど(笑)。『モニカのことはあなたにしかわからないから、自分の思ったこと、感情なども自由にやっていいよ』と言っていただきました。実際にアクションもハードだし、銃も本当にバンッ! と音がして怖くて、その中で私は役の通り、おびえていただけなんです」

小西桜子

 父親の借金のカタに売られ、薬漬けにされているモニカ。その状況を想像するのはたやすくはなかった。難しかったのは、意外なシーンだ。

「窪田さん演じるレオと電車移動するシーンで、父親の幻覚に苦しめられていたモニカの心が初めてほぐれる瞬間があるんです。そのときの感情の変化を表現するのが難しかった。何テイクもやり直したんですが、窪田さんがiPodで音楽を聴かせてくれたり、『三池さんはなんでも受け止めてくれるから、どうやっても大丈夫』と声をかけてくださったり。心強かったです」

 “初恋”というタイトルをどう感じ、演じたのだろう。

「本当の恋、という感じですね。いくつで出会うかも関係ないし、出会ってしまったら、突き進むしかない。運命的なものだと思います」

 演技を志したのは、大学時代だ。

「埼玉の普通の高校生だったのですが、大学に入って、世界が広がりました。芸術コースを専攻していたので、周りの影響で映画をたくさん見たし、演じることに興味が出てきた。大学3年になったとき、やりたいことが芸能の仕事以外に思いつかなかったんです」

 就職活動をせずに、この道一本でやろうと決心した。

「芸能事務所に履歴書をたくさん送り、オーディションもたくさん受けました。でも半年くらい、ずっと落ち続けたんです。『どうしよう』と思っていたときに、今のマネージャーさんと出会うことができました」

 きっかけはインスタグラムだという。

「自分の写真をアップしたり、発信することはやっていたので、見つけてもらって、本当に嬉しかったです」

小西桜子

 おとなしく、はかなげな印象の中に、信念と強さを秘めている。

「今考えると、あの時期はすごく馬力があったと思います。何もないところから丸腰で、一人でオーディションに行ったり、芸能事務所とメールで連絡を取り合って面接に行ったり。がんばっていた、と思います」

 自らを鼓舞し、夢を掴み取った。今も自分を煽ることはありますか?

「たぶん、けっこう煽ってます(笑)。仕事に行く前によくロックを聴くんです。レディオヘッドとか。そういうので自分をアゲていきます」

 今年は『初恋』や『ファンシー』など、出演作が相次ぐ。

「これらの映画がなかったら、今の自分はなかったと思うほど、素晴らしい経験をさせていただいて感謝しています。憧れの方は満島ひかりさん。お芝居にストイックで、心を込めて演じられていると感じます。私も一つ一つの作品に心を込め、大切に演じられる女優になりたいです」

『初恋』
2020年2月28日(金)全国公開
三池崇史監督によるオリジナルストーリー。余命幾ばくもない重い病に侵されたプロボクサーの葛城レオ(窪田正孝)と、親の虐待から逃れるように街へ流れつき、ヤクザに囚われていた少女・モニカ(小西桜子)は、ヤクザの資金源となる“ブツ”を巡る争いに巻き込まれる。
(配給:東映)
https://hatsukoi-movie.jp/
(C)2020「初恋」製作委員会

小西桜子 こにしさくらこ 女優。1998年3月29日生まれ、埼玉県出身。個人として自主映画やMVに参加。2017年、映画『一晩中』で主演を務める。2020年は、2月7日公開映画『ファンシー』出演。2月28日公開の三池崇史監督作品『初恋』では、オーディションで約3千人の中からヒロインに抜擢される。その他、出演作の『猿楽町で会いましょう』が公開予定。

撮影/Jan Buus
取材・文/中村千晶

ヘアメイク/松田陵(Y’s C) スタイリング/吉田ナオキ 衣装協力/Lights by Yasuko Kondo(プリマクレール・アタッシュプレス 03-3770-1733)