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室井佑月

室井佑月

撮影/福田喜一
取材・文/宮崎新之

室井佑月

室井佑月

 歯に衣着せぬ語り口で痛快に仕事をこなす室井佑月。仕事に対する姿勢を尋ねると、「終わりがないんですよ」と語る。

「書き物の仕事って、少し先のことを書くから季節感とかもわからなくなってくる。1日の流れにしても、ニュースやワイドショーをチェックして、終わってから書き物の仕事をして……となると“あぁ終わった”ってならないんですよ。だって続いてるんだもん。政治とかも連ドラみたいなもんで、続けて見ていないといけなくて、突然、その時だけみても訳わかんないと思うんですよ。だから、終わらせるには強制的に終了させるしかない(笑)。お風呂入って、お酒を飲んだらその日の仕事は終了! そうしないと、自分の中で終わらないんですよ」

 これまで、モデルやレースクイーン、ホステス、女優、小説家とさまざまな仕事をしてきた彼女。独身だった頃の生き方は、刹那的だった。

室井佑月

「独身の頃は、切り花みたいに生きられたらと思っていました。鉢植えの花ってあんまり好きじゃなくて。今、一瞬だけキレイなのがいい。そう思っていたし、そういう生き方に憧れないと、ホステスの仕事とかはやらないでしょ(笑)。後で枯れてしまおうが、ごみ箱に捨てられようが、その一瞬があるほうが素敵なんじゃないか、と。いつ死んでもいいと思っていたし、いつ仕事を辞めてもいいと思っていました」

 すべてのことは、私の自由。どう終わらせるのかも、自分次第。その考えを変えたのが、子どもの存在だった。

「子どもができて、ああそうなのか、と思いました。私が死んでも、私の一部は子どもの中で生き続けるから、やっぱり終わりはない。独身のとき、生まれてきた意味とかをすごく考えていたけれど、子どもが生まれてからは、一つ大きな意味を果たしたと思えたんです」

 子育ては労力を奪い、時間を奪い、一筋縄ではいかぬもの。それでも「子どもの存在が私の心を解放して、心が自由になれた」と話す。

「私は自分の親ともうまくいかなくて、一緒に居るのもつらい時期があったから、人と一緒に居るのが合わない女だと思っていた。でも、子どもとは“離婚”できないってわかって(笑)、別れたい! と思う瞬間があっても絶対に切れない関係なんだと思うと、そこに逆に甘える部分もあって。子どもが成人したら、今みたいな親としての関係とは違った形になるだろうけど、ずっと見ていたいなとは思いますね。思い通りにならなかったら嫌だとかもないし、子どものことはどんなことがあっても根っこの部分は信用しているから。この先、どんなふうになるんだろうって見ていたい。どんな形だっていい。背後霊とかでもね(笑)」

 我が子の行く末を見たい。それは子育てに終わりが無いということ。

室井佑月

「この時代、恋愛でも仕事でも連絡取りたくなったらまた連絡は取れるし、関係の終わりなんてものもない。逃げた魚は大きく見えるし、人生最後の恋を何度もやっている(笑)。亡くなった方だって、飲み会で盛り上がって“ここにアイツも呼びたかったな”なんて思い出す瞬間があったりして、私の中ではその人はまだ終わっていないんです」

 いつかやってくる“終わり”だからこそ、力にもなる。

「終わるかも、っていう時には特別な力を発揮できると思う。もし余命を宣告されたら、言えなかったことも言える。その後の付き合いもないわけだし。仲良しだけど近すぎて言えないこともあるじゃないですか。別れそうにないから黙っていたけどアンタの旦那大っ嫌いとか(笑)。死ぬと思ったら何でもできる。でも意外と死ねないからね(笑)。いつ終わってもいいと言いながら、本当は終われない自分がいるんです」

室井佑月 むろいゆづき 作家。1970年生まれ、青森県出身。ミス栃木、モデル、女優、レースクイーン、ホステスなどの職業を経た後、1997年に作家デビュー。近著に『ぷちすとハイパー!』『ママの神様』など。近年はコメンテーターとして『バラいろダンディ』(MXテレビ)、『ひるおび!』(TBS系)などにも出演。

撮影/福田喜一 取材・文/宮崎新之