撮影/Jan Buus
取材・文/中村千晶
撮影/Jan Buus
取材・文/中村千晶
映画『ビブリア古書堂の事件手帖』では栞子と大輔のほかに、もう一組の男女が重要な役割を果たす。大輔の祖母・絹子(夏帆)と小説家希望の男・嘉雄(東出昌大)だ。一冊の本に隠された二人の秘密とは?
三島 撮影、お疲れさまでした! 映画、ご覧になってどうでした?
夏帆 どうしても自分の登場シーンは客観的に見れなくて。ひとり反省会が始まっちゃうんですよね。それに絹子さんと嘉雄さんがあまりにも真っ直ぐで、恥ずかしくて見てられなかった(笑)。
三島 二人とも中学生みたいに純粋で。絹子さんにとってはきっと、本当の恋を初めて経験した瞬間ですよね。
夏帆 私もこれが絹子さんの初恋だと思って演じてました。
三島 私が作品でやりたかったのは、誰かの想いが本と共に時を超え誰かに届き、その誰かの人生に影響を与えるかもしれないということ。
三島 絹子さんたちの過去パートがしっかり描かれないと説得力が出ないので、脚本を書き足し、かなり膨らませていきました。現場では、毎回無理難題を夏帆さんに言っておったような……(笑)。
夏帆 私、けっこう現場で動揺してました。
三島 今回は絹子さんと嘉雄さんが伊豆の旅館に行く――というシーンの前にちょっと二人で過ごしていただく時間が必要かなと思いまして。なので撮影スタートの前に、夏帆さんと東出さんを旅館の別室に……。
夏帆 閉じ込められたんです!(笑) びっくりしました。
三島 襖を閉める時に夏帆さんの不安そうな顔が見えて、でも、そのままスーッて閉めた(笑)。
夏帆 二人でとりあえず、お互いのことを話したりして。でも、本当はそういう時間を作っていただけるのはありがたいことなんです。やっぱり役者も人なので、いきなり「はい、恋人」って言われてもなかなか難しい。私は技術的にパッとできるタイプではないので。
三島 夏帆さんには具体的なことを言う必要がないんです。感度がほんとに高いので「感じて頂ける環境」さえ作れたら大丈夫です。キーワードを投げておくと「う~ん」と悩んで、芝居で見せてくれる。とても信頼している女優さんの一人です。東出さんも夏帆さんも準備段階でちゃんと悩んで、相手のお芝居を受けて、素直に反応してくれます。あとお二人とも文学が似合いますよね。夏帆さんも本、お好きですよね?
夏帆 はい。昭和のあの時代の雰囲気もすごく好きです。携帯もなく、手紙でやりとりするのっていい。
三島 それを本にはさんだまま、ずっと取っておいたり……。夏帆さんには捨てられないもの、ありますか?
夏帆 5年くらい前に洋服など、突然捨てられるようになったんですけど、やっぱり思い入れのある本とかは捨てられないですね。台本も思い出深いものを残しています。でも役を引きずる、とかではないですね。なんだかまだ現場の感じが残ってるな、ということはありますけど。
三島 役ってすぐ抜けますか? 残っちゃうという人もいるけれど。
夏帆 どうでしょうね……でも、私は演じるときに、完璧に違う人物になるとは思ってないんですよね。演じているのは自分だから、自分の中でその役に近いところを探していくという感じなんです。あ、でも現場の夢は終わってからもすごく見ます。「あ! これだった! この演技が正解だ!」と、うなされて目が覚めたり(笑)。
三島 わかります。私も「このカットいい!」とか現場の夢を見てハッと起きて「もう撮り終わったんだっけ」って。職業病ですね。
『ビブリア古書堂の事件手帖~memory of antique books~』
11月1日(木)全国公開
三上延による同名小説を三島有紀子監督が映画化。五浦大輔は、祖母・絹子の遺品である夏目漱石の「それから」に記された著者のサインの真偽を確かめるため、「ビブリア古書堂」を訪れる。店主の篠川栞子は、サインの謎を解き明かし、この本には秘密が隠されていると指摘。これが縁となり、古書堂で働き始めた大輔は、栞子が太宰治の「晩年」の希少本をめぐって謎の人物から脅迫されていることを知る。
(配給:20世紀フォックス映画×KADOKAWA)
http://biblia-movie.jp/
(C)2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会
夏帆 かほ 1991年生まれ、東京都出身。’04年に女優デビュー。’07年に『天然コケッコー』で映画初出演を務め、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の新人賞を獲得。近年の主な出演作に『予兆 散歩する侵略者 劇場版』『伊藤くん A to E』『友罪』など。『ビブリア古書堂の事件手帖』では五浦絹子を演じる。最新主演映画『きばいやんせ! 私』が2019年春公開。
三島有紀子 みしまゆきこ 大阪府出身。18歳から自主映画を監督・脚本。大学卒業後 NHK 入局。数々のドキュメンタリーを手掛けたのち、映画を作りたいと独立。近年の代表作に『繕い裁つ人』『少女』など。’17年の『幼な子われらに生まれ』では、第42回モントリオール世界映画祭・審査員特別大賞を筆頭に数々の映画賞を受賞。最新監督作の『ビブリア古書堂の事件手帖』が11月1日(木)公開。
撮影/Jan Buus 取材・文/中村千晶
ヘアメイク/石川奈緒記(夏帆) スタイリング/李 靖華(夏帆)、谷崎 彩(三島) 衣装協力(夏帆)/トップスY's Pink(ワイズ プレスプーム 03-5463-1540)、パンツ INSCRIRE(アマン 03-6805-0527) 衣装協力(三島)/レースプルオーバー、パンツ、ヒールともにkolor(03-6427-6226)