FILT

菜々緒

菜々緒

撮影/若木信吾

 凛とした佇まいにどこか浮世離れした印象を受けるが、一方で、圧倒的な存在感を放つ人でもある。すべてを見通すような眼差しは、映画『怪物の木こり』で演じた警視庁のプロファイラー・戸城嵐子を連想させた。

「役作りのために他の何かを参考にすることって、あまりないんです。演じるのは私とは別の人格ですけど、自分の中に少しでも似た部分がないと、良い演技はできないと思っていて。嵐子は正義感が強くて、素直でまっすぐで、事件や犯人に執着してしまう性格でもあります。私がこれまで生きてきた中で得た強さや信念、そして、秘めている異常性などをパズルみたいに組み合わせて、嵐子というキャラクターを作っていきました」

 三池崇史監督が手がける本作は、亀梨和也演じる弁護士の二宮彰を中心に物語が動いていく。斧で脳を奪い去る連続猟奇殺人事件の犯人に狙われた二宮は、犯人を凌駕するサイコパスでもあった。

菜々緒

「事件を追う嵐子にもサイコパス的な要素を取り入れたいと三池監督がおっしゃっていて。殺人事件の現場を捜査する際に、死臭を嗅ぐ仕草を取り入れたりしました。彼女の鋭さは危うさでもあって、でも、そこが大きな魅力になっています。サイコパスは普通の人と異なる視点で物事を見ているイメージがありますが、まさに違う視点を持つ嵐子だから二宮に迫ることができたのかなと。映画は追う者と追われる者が入れ替わりながら、目が離せない展開が続くので、最後まで楽しんでほしいですね」

 サイコパスたちを描いたサスペンス映画だけあり、猟奇的なシーンも多数登場する。

「血が出る場面は思わず目を覆っちゃうという人もいますよね。でも、私は意外とそういうシーンが平気で、現実的な出来事は普通に受け入れることができるタイプなんです。医療系のドラマに出演させていただいた時に、みんなで本物の手術の動画を見て研究したんですが、とても冷静に見ている自分がいました」

 撮影現場の雰囲気は作品によって異なるものだが、今回で3作目の参加となる三池監督の現場はどんな様子だったのか聞いてみた。

「いつも和気あいあいとした現場で、今回お話をいただいた時も“三池監督の映画だ、やった!”みたいな(笑)。撮影はシリアスなシーンの連続なんですけど、待ち時間は本当に楽しくて、何度か共演させていただいている亀梨さんにも“最近どうだった?”みたいな感じで声をかけていただいて、お互いの近況を話しました。でも、撮影が始まるとガラッと変わって、みなさん一瞬でONになるんです。数秒前までニコニコ笑っていた亀梨さんも、急に二宮彰の冷酷な感じになる。そのギャップと狂気は本当にすごくて、二宮役は亀梨さんしか考えられないと言い切れるほど、しっくりきていました」

 コロナ禍では撮影の中止や公開の延期が相次いだ映画界。ようやく普通の状態が戻ってきたのだろうか。

「今回の撮影も、ほぼ日常に近い形で順調に進みました。でも、元に戻ったというよりも、新しい世界になったというイメージですね。みなさんの衛生に対する意識も変わりましたし、前とは違う新しいステージに進んだのだと、この映画の現場を通じて思いました」

菜々緒

 いま、ようやく会いたい人と会えるようになったという。

「コロナ禍でも対策をしながら映画やドラマの撮影は続いていたので、現場に迷惑をかけられませんから、友人と会うのを控えたりしていました。いまはもう一緒にご飯を食べたり、旅行に行ったりすることができるようになったので、人と会うことの楽しさを満喫しているところです。オンライン交流も流行りましたけど、やっぱり直接会って空気感を共有する感覚は、何物にも代えがたいですよね。それは撮影現場も同じで、キャストやスタッフの方と会って自由におしゃべりをしたり、人と人が対面でお芝居をしたりすることって、当たり前じゃなかったんだなと。この映画は、会話劇が見どころの一つでもあるので、特に実感したかもしれません。コロナ禍は大変な日々でしたけど、私にとっては、そうしたことを改めて考えるきっかけになりました」

『怪物の木こり』
2023年12月1日(金)より全国ロードショー
倉井眉介の原作小説を監督・三池崇史、主演・亀梨和也で映画化。理由がわからないまま怪物の仮面を被った連続猟奇殺人事件の犯人に追われる弁護士・二宮彰(亀梨和也)もまた、冷血非情なサイコパスだった。警視庁のプロファイラー・戸城嵐子(菜々緒)は事件を捜査する過程で、二宮に接近する。
(製作幹事・配給:ワーナー・ブラザース映画)
https://wwws.warnerbros.co.jp/kaibutsunokikorijp/
(C)2023「怪物の木こり」製作委員会

菜々緒 ななお 女優。1988年生まれ、埼玉県出身。ドラマ・映画・雑誌・CMなどに幅広く活躍中。近年の主な出演作は、主演を務めたドラマ『忍者に結婚は難しい』、映画化もされたドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、映画『地獄の花園』など。最新出演作の映画『怪物の木こり』が2023年12月1日に公開。

撮影/若木信吾

ヘアメイク/浦上祐子(ARTS) スタイリング/金 順華