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鈴木亮平

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撮影/若木信吾

鈴木亮平

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 頼もしいヒーローから悪のカリスマに、市井の人々まで、どんな役にもなりきる感性の鋭さは、普段の生活の中で培われていた。

「自分が何を感じているんだろうというのは、なるべく言語化できるようにしています。例えば、美術館へ行って感想を求められたときに、僕はどの絵が一番好きで、その理由はこうですと明確に答えられるようにしておきたい。さらに、その絵を演技に置き換えたときに、自分だったらどういう表現ができるんだろうということも考えたりします。僕の場合は、いったん言語化した方が演技に変換しやすいみたいで。だから感情を言葉にすることが生活の一部になっているのかもしれません」

 役を深く掘り下げることも、役者として欠かせない作業の一つ。2020年に他界したエッセイスト・高山真の自伝的小説を映画化した『エゴイスト』では、役作りのために徹底したリサーチを行った。

「自分の心情を俯瞰で見て言語化する癖とか、高山さんは僕と似ているところが結構あり、ご家族や親交のあった方たちからお話を聞くうちに親近感を抱くようになりました。いつも役について調べていくうちに、愛着と責任感が湧き、中途半端にできないという気持ちになるんです」

鈴木亮平

 映画で演じたのは、ファッション誌の編集者として働くゲイの浩輔という人物。浩輔は、宮沢氷魚の演じる龍太と出会い、恋に落ちていく。

「宮沢くんは龍太みたいにピュアでまっすぐな青年でした。キュートさと精悍なかっこよさが同居している魅力的な人で、個人的には演技の相性もすごくよかったです」

 まるでエチュードのような、登場人物から出てきた言葉をすくいあげるような撮影だったと振り返る。

「浩輔から生まれたセリフだったらなんでもいいと、そのままその場所で生きてくださいと監督の松永大司さんには言われていて。それってものすごいプレッシャーで、集中力も使いますけど、同時に演者を信頼してくれている理想的な現場でもあるんですね。心から自然に出てきた言葉がセリフになるというのは、僕らが究極的に目指すところですし、監督を含めたスタッフ全員がカメラの回っていないところでもサポートしてくれたこともあって、ずっと浩輔でいられました」

 龍太に恋する場面は、自分の過去の経験を参考にすることもあったという。

「恋愛に夢中になっている状態ってかなり特殊ですよね。ものすごくバカなこともしちゃうし、あとから思い出すと恥ずかしいこともしている。ドラマだったら好きな人を前にしても、良いセリフが言えるんでしょうけど、現実だと何も出てこねーや、みたいなこともあったりして(笑)。なんでもない相手の言葉に一喜一憂したり、この瞬間を切り取っておきたいと思ったりもする。劇中で浩輔はハイテンションで歌っていましたけど、僕もああいう状態になってしまいます。変な汗も出てくるし、連絡したいけど、やめておこうかなと思いを巡らせるし。そういったいつもと違う心の動きって、何度経験しても慣れることがないですよね。役を演じるときも、この人の状態って自分にとってはいつの状態なんだろうと、思い出して確認することはよくあります」

 いまも鮮明に覚えているのは、子どもの頃の恋に落ちた瞬間のこと。

「小学5年生のときの林間学校で、近所の仲の良かった女の子がパジャマ姿にお風呂上がりの濡れ髪で、2階から階段を降りてきたんですよ」

鈴木亮平

「なんだかスローモーションに見えて、うわ、かわいいな、と。そこからずっと好きでしたね。それが初恋だったと思います。でも、結局好きだと言えなかったんですよ。いまもこの話をすると、どこかで彼女の耳に入って、僕が好きだったことがバレちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしちゃいますけど(笑)」

 過去の経験やリサーチした情報などから浩輔を作り上げ、演じきった3週間。撮り終えて、いま思うのは、『エゴイスト』という題名について。

「タイトルとは裏腹に、自分をずっと顧みている、自分の愛をエゴなんじゃないかと反芻している人の話だと感じました。献身という名のエゴは、果たして嫌悪すべきものなのか。きっと映画を観る前と後で、タイトルが持つ意味も変わってくるのではないかと思います。もう一つは、映画を通して、性的マイノリティについて自分ごとのように捉えてもらうきっかけになればと思います。そして、性的マイノリティをめぐる権利保障や同性婚の法制化など、少しでも僕たちの社会が前進する一助になってくれれば嬉しいです」

『エゴイスト』
2023年2月10日(金)全国公開
ファッション誌の編集者でゲイの浩輔(鈴木亮平)は、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と出会う。シングルマザーである母・妙子(阿川佐和子)を支えながら働く龍太に浩輔は惹かれていき、2人は恋人関係になるが……。
(配給:東京テアトル)
https://egoist-movie.com/
(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

鈴木亮平 すずきりょうへい 俳優。1983年生まれ、兵庫県出身。2006年に俳優デビュー。近年の主な出演作に映画『燃えよ剣』『孤狼の血 LEVEL2』『土竜の唄 FINAL』、ドラマ『レンアイ漫画家』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『エルピス―希望、あるいは災い―』など。最新主演映画の『エゴイスト』が2月10日に公開。また、4月28日には劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』が公開予定。

撮影/若木信吾

ヘアメイク/宮田靖士(THYMON Inc.) スタイリスト/臼井 崇(THYMON Inc.)