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「ワークライフバランスという言葉を聞くことが多いと思いますが、私は”ワークライフブレンド”と言っているんです。仕事もプライベートも混ぜてしまうという考え方です。私も20代の時は会社員として仕事をしていましたが、仕事が憂鬱だな、と思う時に限って”休みは何をしよう””休暇を使ってどこに行こう”ということばかり考えていたんです。でも、いざ休暇に出てみると休み明けに提出する企画書のことや会議のことばかり考えている自分がいて…。結局どっちにも集中できていないことに気がついたんです。これは本当にもったいない。だって仕事もプライベートの楽しみも、すべて自分の人生の時間ですから。そう考えればこれまで感じていたストレスも圧倒的に減るはずです」
 その言葉を体現するように、取材の撮影時に安藤美冬さんは、仕事である取材撮影の時間も楽しむ”柔軟”な姿を見せてくれた。モデルのよう
にカメラを向けられることが仕事でない人は、大掛かりな設定で撮影をされると萎縮してしまいがちだ。でも彼女はその”仕事“の時間も楽しんで過ごしているように見える。まさに、ワークライフブレンド”という人生を楽しむ方法を見せてくれた。
「私、10代のころからずっと自分にリミットを作ってきた人生を歩んでいたんです。でも、できないってリミットを作ることって本当にもったいない。名刺や肩書き、所属する会社が無くなることが怖いと感じる人がいるかもしれませんが、そんな紙切れ一枚に自分を託してはいけないと思います。だって私たちはみんな必ず才能を持っているんです。サラリーマンをしているけど、実は歌がうまいとか、料理が上手で人に褒められる腕前だ、とか。そういう自分のスペシャルな部分をSNSや上司に宣言しなくても、まずは自分で自分を認めてあげることが第一歩。
自分の中にある才能が見つけられないという人は、”活動範囲の圏外に出よう”と私は提案します。いつもより少し違う場所に行くと自分の隠された能力が見つかるはずです」
 安藤さんは若いころバックパッカーとして50か国にも及ぶ国々を旅してきたという。その旅を通して“自分には何ができるんだろう、どんな能力があるんだろう“と自分探しをしていたそうだ。でも、今の彼女は「そんな自分をバカっ!といってあげたい」と笑って話す。
「旅ももちろん素晴らしいけれど、ひとりでは自分のできることは見つからないんです。やっぱり仕事を通して力試しをした方がいい。仕事って二人の人間関係の中でできること。与える側と受ける側が、お互いに喜ぶものを提供するために頑張ることで、自分の才能に気が付くことがあると思います。仕事という共同作業を行うことで、初めてそれが転写
されて自分の姿を見ることができるはずですから」
 そう語る彼女は”キャリアアップではなく、ワークスライディング”という考え方で才能も人生も、もっと豊かになると話す。
「時間の経過に合わせて右肩上がりのゴールを目指すことが日本では良しとされていますが、ライフステージの変化によって、嗜好もその時に開花する才能も仕事との関わり方も変わるはずです。上に上がることをゴールと考えるとストレスですが、その時々で自分がやりたいことや、提供できる才能を使うようにスライドさせていくことも、考え方の一つです。何時間働けば幸せか、とか残業がないのが幸せ、というよりは、働いている時間が分からなくなるような、プライベートと仕事という時間を分けて考えることを忘れてしまうくらい、すべての時間が自分の人生と思えるブレンドされた働き方がきっと幸せな人生だと思います」

安藤美冬 1980年生まれ。東京都育ち。SNSでの発信と肩書きにとらわれない自由なワークスタイルで注目を浴びる。コラム執筆、大学講師、商品企画などを手がけるほか、最近は書籍の取材や講演で海外も飛び回る日々。著書に『冒険に出よう』(ディスカヴァー)がある。

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