「こんなに大きな作品に主演で関わらせてもらうのは初めてだし、チャンスだと思いましたね。それに原作は恋愛モノにしてはチャレンジングな設定ですけど、僕はそういうところにやり甲斐を感じるタイプ。ラブコメディもずっとやりたかったんですよ。年齢的にももうないと思っていただけにうれしかったですね」
　鈴木亮平がそう笑顔で振り返ってくれたのは、人気コミックを映画化した『俺物語!!』のこと。高校生とは思えない超イカツイ顔面と屈強な肉体、ピュアなハートを持つ主人公・猛男の恋の騒動を描いた本作だが、鈴木へのオファーは彼が得意な“肉体改造”ありきだったのか？
「プロデューサー陣は『TOKYO TRIBE』の体重を増量した僕をイメージして話をくださったんですが、初顔合わせの時の僕はドラマでげっそり痩せている役をやっていて、消え入りそうな声だったんです（笑）。

後で聞いたら、プロデューサー陣はどうしよう？と思ったみたいですけど、僕は1カ月で30キロ増量する勝算はあったし、誰もできないだろうから『大丈夫。僕を信じてください』と言いました」
　劇中では猛男がカメラ目線で何度も絶叫する「好きだ～！」の表情が印象的だが、「あれは気持ち優先で出た顔です」と笑う。
「相手役の永野芽郁ちゃんが本当に可愛いので、彼女を見つめながらそのキュンキュンした気持ちをギュンギュンにして、ドーン！ と出した結果があの顔ですね（笑）坂口健太郎くんが演じた親友の砂川に『キスの練習をさせろ！』と迫るシーンの撮影も楽しかったですよ。 撮影当日、現場に監督が台本にはない菓子折りを用意していて、そのアイデアにまず爆笑したし、その菓子折りを猛男がスッと出したら、砂川がスッと返してくるのも面白かった。映画では使われていないけれど、ラップ

越しにキスをした時の坂口くんの顔にも大笑いしました（笑）」
　そんな鈴木にとって、役者の仕事はどんなものなのだろう？
「僕は仕事が自分の人生を豊かにするという考え方ではなくて、演じる時間のために普段の自分の時間を生きているような気がします。他人の人生を生きるのが俳優の仕事ですけど、普段の自分の生活を充実させることによって、他人の人生を演じている時の自分がより良くなればいいと思って生きている。そういう意味では、仕事以上のものになっているところがあります」
　でも、肉体改造まですると私生活にも影響を及ぼすのでは？
「だけど、それは役に対しての準備ですからね。現場だけが役者の仕事じゃないし、特に体型を変えなきゃいけない場合は24時間自分の管理が必要なので、

そういう意味ではずっと仕事をしていると言えますよね。現場ではむしろ役者にできることってそんなに多くないし、僕は準備の方が重要だと思っています」
　それでは、鈴木にとって役者としての完成形はどこなのか？
「それはないと思います。すごいキャリアの先輩たちも、自分の芝居に不満だって言っているので、たぶんそうなんでしょう。 でも、そこをもっと磨き続けて、壊して、また作り直して続けていくことが、俳優としての生き方なのかなとは思います。でも、達成感はありますよ。2つありますね。1つは作り上げた作品が世の中に出て、みんなに愛された時。つまりヒットしたときですね。もう1つは現場で相手の俳優、俳優たちと心が通い合ったなと思えた時。僕たちは確かに今そこに生きていたよねってお互いに思える、その瞬間が達成感になりますね」