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市原隼人
 6月20日から全国公開される映画『極道大戦争』。市原は若き極道役で主演を務めた。半裸になるシーンも多いが、その肉体の締まっていること。
「2歳から器械体操と水泳をやっているんです。スポーツはずっと好きでしたね」
 意外なことに、極道役は今回が初めてである。役作りにあたっては、任侠の世界ならではの所作、話し方、立ち居振る舞いなどを意識しながら作り込んでいったという。
「あとは、どの作品も同じなんですが、とにかく役に入り込むこと。現場では自分の中から感情を引き出して、それが溢れ出たら動き、台詞を発する。そういう風に演じています」
 言葉を慎重に選んで絞り出す。とはいえ、この作品は特別だと言う。
「極道モノなのに『ヤクザ・ヴァンパイアがカタギの血を吸うと、カタギがヤクザ化する』っていう設定が、そもそもぶっ飛んでる(笑)。まず、それを受け入れるところから始まって、さらに現場でも毎日何が起こるかわからない状況。こんな緊張感は人生で初めてでしたね」
 一方で、市原の映画に寄せる思いは熱い。’01年の『リリイ・シュシュのすべて』でデビュー以降数々の作品に出演してきた。
「いろんな規制がかかる中で、三池さんは常にクレイジーな作品を作ろうとしている。それについていくチームもすごい。こういう姿勢は、映画好きや映画を作ってきた人へのメッセージでもあると思う。実際に今回も、『もっともっと、楽しんでやりましょうよ』って台本に言われている気がしました」
 役には人一倍入り込むタイプだ。
市原隼人
 役作りのために走り込みすぎて、痛み止めの麻酔を打ちながら撮影に臨んだこともある。
「現場に入る前にできることは、かなり前から準備を始めます。そうしないと本番までに間に合わない。とはいえ、役者としてはまだまだですけど。自分の中ではルールも定義も概念も何もありません。やってダメだったら全部ぶち壊して、一からまた始めればいいと思っているんで」
 そんな市原にとって“理想的な男”とはどんなイメージなのだろう。
「本気で泣いて、本気で笑って、本気で悔しがってができる人ですね。物事の根源を大切にしながら、それを継続できる人。とはいえ、物事の根源といっても、国によって法律が違うように、上司によって評価の尺度が違うように、定義はしづらいんですが。統計学で導けるのか、哲学的に決めてしまえるものなのか…」
 ずいぶんと考え込むタイプなんですねと返すと、「ふだんは超楽観的ですよ。ただ、それを知らないで生きているのも寂しいなあと思って」と笑う。さらに、聞いてみた。「では、どんな役者になりたいのか?」と。その答えは、じつに市原らしいものだった。
「それは観てくださったお客様が決めることなので。死んで墓に入ってから、『あの人はこういう人だったね』って言ってもらえれば、それでいいかな、と思います」
 インタビュー後、市原は「最近は休日になると外に出て写真を撮ってます」と話してくれた。どんなものを撮るのかとたずねたら、「古い自転車屋だったりとか。歴史とか文化を感じるものが好きで」と語ってくれた。その多くの写真は、きっと市原隼人という人間のことを知るための大きなヒントになるような気がしてならない。

市原隼人 いちはらはやと 1987年生まれ。神奈川県出身。映画「リリイ・シュシュのすべて」で主演デビュー後、テレビドラマ「ROOKIES―ルーキーズ―」など話題のドラマに出演。舞台、映画とその演技は多方面で話題を集める。映画『極道大戦争』は6月20日(土)全国公開。

スタイリング/小野和美
ヘアメイク/大森裕行(VANITES)
BELAFONTE/ 問合わせ先/ALTER-E-GO

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