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138DEC-JAN 2025.11.20
激しいほど、愛しい。
俳優・水上恒司

 そのまっすぐな眼差しの男は、スクリーンの中で激しく揺れ動きながら、確かな愛おしさを観る者に抱かせる。ワルたちの闘いと絆を描いた12月5日公開の映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』で、主演の水上恒司が体現したのは、熱い血潮をたぎらせる不器用な青年の姿だった。

「僕の演じた桜遥はとても激しい男で、それが若さでもあります。この映画では、その青い部分を大事に演じようと努めました。思い出すのは、みんなで喫茶店を訪れて、オムライスを食べたあとのシーンです。桜は、街を守る防風鈴の総代を務める梅宮にガンをつけながら、“お前はてっぺんになって何をしたかったんだ”と問いかけるんです。比較的、抑えめなトーンの言葉なんですが、その中には迷いや戸惑い、驚きや苦しさなど、いろいろな桜の感情が混ざっている。まるで“俺はどうすればいい!?”と訴えているような、あの揺れている気持ちが桜の未熟さでもあり、観ている人が共感できるところなのかなと感じています。ただ、仲間との触れ合いの中で成長しながらも、桜をコロッと変わってしまうような男にはしたくなくて。激しいままであり続ける一貫性みたいなものは意識していました」

 激しいアクションシーンも本作の見どころの一つ。バトルはもちろん、飛ぶ・跳ねる・登るといった、パルクールさながらのアクションが繰り広げられる。

「アクションコーディネーターの方が具体的な動きを指示してくださったので、それをもとにクオリティを上げていくことだけを考えて臨みました。その中でも、自分の技術が追いついていないという悔しさは確実にあって。もし、劇中でかっこよく見えていたら、それはアングルや編集のマジックでもあるのかなと。バトルも特にアクション部の重要性を感じたシーンの一つでした。例えば、殴るシーンって、本気で拳を当てているわけではなく、痛みを感じないくらいポンッと当てている程度なんですね。でも、劇中ではとても痛そうに見える。それって、受け手側が動きや表情で本当に殴られているように見せているからであり、アクションのうまさによるものなんです。僕は1対複数人のシーンが2回あって、主に殴る側だったからこそ、殴られる受け手側のすごさというのは、この作品の中で一番感じているのではないかなと思います」

 俳優として経験値を重ねてきたからこそ、実感できることがある。最近は自分のことについても、客観視できるようになってきた。

「本物の客観性は他人でないと持てないと思うので、あくまで主観の中の客観ではありますが、役者は常に客観性を持ったほうがいいと思っています。そして、僕も演じれば演じるほど、年々、自分のことを冷めた目で見る自分がより濃くなっている気がします。そうは言っても、演技の激しさみたいなものって、その客観性を忘れたときに訪れるのかなとも思ったりするんです。もちろん必ずしも、それで良い画になるとは限らないし、周りが見えなくなるという危険性もある。そのバランスはずっと模索していくような気がしています」

 実は、激しいぶつかり合いの末に、演技の世界に足を踏み入れた。

「俳優を志すと決めたときに、両親とは思いっきりぶつかりました。相談ではなく、決定事項として、“以上です!”みたいな言い方をしたので、よけいに反対されましたね(笑)。両親としては、大学でも僕が野球を続けるものだと思っていたから、たまったもんじゃなかったと思います。桜と同じように、反発されても一度決めたことを貫き通したのが僕の未熟さだったと思いますが、でも、ぶつかったおかげで今があるし、未来は自分で選択するものなのかなと。一方で、いつか僕に子どもができて、子どもから同じように“これが自分の人生だ!”と言われたら、僕もそうしてきた手前、何も言えない。そのとき、親の本当の気持ちがわかるのかもしれないですね」

 今、俳優として道を進む中で、さまざまな人へ想いが及ぶようになった。

「映画を観ていただき、作品を愛してもらうことができれば、それが僕にとっての無上の喜びです。映画を観た人に豊かな人生を送ってもらうのが僕の願いですし、そのきっかけの一つに、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』がなってくれれば、とてもうれしいです」

映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』
2025年12月5日(金)公開
世界累計発行部数1,000万部突破の人気コミックを映画化。ケンカだけが取り柄の孤独な高校生・桜遥(水上恒司)は、不良の巣窟である風鈴高校のてっぺんをとるため、街の外からやってきた。しかし、風鈴高校の生徒たちが<防風鈴=ウィンドブレイカー>と呼ばれ、街を守る存在に変貌していたことを知った桜は、戸惑いながらも仲間と共に街を守る闘いへ身を投じていく。
https://wwws.warnerbros.co.jp/wb-movie/
(C)にいさとる/講談社 (C)2025「WIND BREAKER」製作委員会
水上恒司 みずかみこうし 俳優。1999年生まれ、福岡県出身。2018年のドラマ『中学聖日記』で俳優デビュー。近年の主な主演作に、映画『死刑にいたる病』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『九龍ジェネリックロマンス』『火喰鳥を、喰う』、ドラマ『怪物』『シナントロープ』など。

撮影/藤原江理奈
スタイリング/藤長祥平 ヘアメイク/Kohey(HAKU) 衣装協力/ジャケット¥52,800、パンツ¥35,200(共にサバイ/イボルブ03‐6823‐5074)、中のジャケット¥138,600(サルトinfo@sarto-designs.com)、その他スタイリスト私物