まなざしが、あと押し。
豆原一成
 グローバルボーイズグループ・JO1 のメンバーであり、俳優としても活躍中の豆原一成が、2025年10月24日公開の映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』で演じたのは、コーヒーを愛する大学生の拓磨だった。母親の長期出張をきっかけに、拓磨は市毛良枝演じる祖母の文子と同居することになる。50年以上のキャリアがある大女優との共演に、プレッシャーはなかったのだろうか。
「プレッシャーはありましたし、緊張もしましたけど、市毛さんがとにかく優しい方で、安心して撮影に臨むことができました。待機中や楽屋でもご一緒させていただいて、僕のトレーニングの話とか、市毛さんの趣味の登山の話とか、他愛もないおしゃべりをずっとしていました(笑)。大先輩ですけど、本当のおばあちゃんみたいな感じで接していたと思います」
 物語の序盤、文子はあるきっかけから拓磨と同じ大学へ通うことになる。印象的だったのは、祖母と大学の友人たちのシーンだという。
「おばあちゃんが大学で知り合った友達を家に連れてきて、拓磨がせっかくならと、みんなに自分が淹れたコーヒーを振る舞うシーンがあるんですけど、それが拓磨の本来の姿だというのを強く感じました」
 豆を挽いて淹れるほどコーヒーにこだわりを持っている拓磨だったが、その“好き”を追求する勇気をなかなか持てないでいた。みんなにコーヒーを振る舞うシーンは、まさに拓磨が一歩を踏み出した場面だったと言えるのではないだろうか。
「おばあちゃんに促されたのもあるけど、拓磨は大学のみんなが集まっているならコーヒーを淹れてあげようって、たぶん意識せず、自然に行動したと思うんです。そんな拓磨を八木莉可子さん演じる恋人の紗季が手伝ってくれて、おばあちゃんも“好きなことやるのって楽しいよ”と言ってくれた。拓磨にしてみれば、これが自分のやりたいことなんだと気づいた瞬間だったのかなって」
 演じる上で、拓磨という人物をどのように捉えていたのか、聞いてみた。
「拓磨は人に優しく、誰からも愛されるキャラクターですけど、自分に自信がなくて、苦しんだりもする。とても人間味のある男の子だなと感じました。ただ、軸にはコーヒーが大好きという気持ちがあって、そこはどこまで行っても変わらないんだろうなと」
 夢を追うのは決して楽ではないが、寄り添ってくれる人がいるだけで、頑張ることができるのかもしれない。
「拓磨にとっては、おばあちゃんや紗季がそうですよね。僕もこれまでいろんな人に助けてもらっていて、演じる上で拓磨とすごく似ているところがあるなと感じたんです。僕の場合はダンスや歌が大好きで、仕事にしたいと考えていたんですけど、その自信がありませんでした。そんなとき、父が“一成ならできるやろ”と背中を押してくれたんです。その経験もあったので、拓磨の心情とリンクさせながら演じることができました」
 今でも自信が揺らぐ瞬間はあるが、そんなとき頼りになるのは、やはりJO1のメンバーたちだという。
「お芝居もそうですけど、一人の仕事のときって、けっこう不安を感じてしまうんですね。僕はあまりマイナスの感情を表に出すタイプではないんですけど、メンバーと一緒にいると、それを察してか“明日の撮影、頑張って”みたいな感じで、みんなフラットに話しかけてくれます。もう一緒にいる時間も長いので、一から十まで全部言わなくても伝わってくるし、何気ないことですけど、そういうやり取りがあるから気持ちをプラスにできる。もちろん、メンバーたちは何が何でも奮い立たせてやろうと声をかけているわけじゃないと思うんですけど、僕には助けになっているので、すごく感謝しています」
 一方、自身の言動が他のメンバーやファンのあと押しになっていると感じる瞬間はあるのだろうか。
「JO1の中では僕が一番年下ですし、誰かの相談役になったりすることはないんですけど、たぶん僕に高い熱量があれば、他のみんなの刺激になるというか、“あいつ頑張ってるな! じゃあ、俺も頑張ろう”となってくれるんじゃないかなと勝手に考えています。それはファンの皆さんに対しても同じで、何かメッセージというよりは、常に行動で示していけるといいのかなって。僕は自分が一度口にしたことは、絶対にやり遂げたいと思っているので、その姿が少しでも誰かの力になっていれば、それ以上の喜びはないですね」
映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』
2025年10月24日(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー
祖母・文子(市毛良枝)と暮らし始めた大学生の拓磨(豆原一成)は、亡き祖父・偉志(長塚京三)の書斎で大学の入学案内を見つける。それは偉志が遺した文子へのサプライズだった。一歩踏み出し、若い頃の夢だった学びの日々を謳歌する文子。一方、拓磨は夢に自信が持てず将来に悩む。そんな二人は、富士山が好きだった偉志の手帳に不思議な数式を見つける。監督:中西健二 配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/fujisan_and_coffee/
(C)2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」
豆原一成 まめはらいっせい 歌手、俳優。2002年生まれ、岡山県出身。グローバルボーイズグループ・JO1のメンバー。2025年4月2日にリリースされたJO1のデビュー5周年を記念したベストアルバム「BE CLASSIC」は日本国内の主要音楽チャートで1位を獲得。俳優としての主な出演作は、2024年放送の連続ドラマ『海に眠るダイヤモンド』や2025年公開の主演映画『BADBOYS -THE MOVIE-』など。市毛良枝とのW主演映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』が2025年10月24日に公開予定。
撮影/Nico Perez
スタイリング/岡本健太郎 ヘアメイク/奥野まこと 衣装協力/ジャケット¥201,300(Plan C / ブルーベル・ジャパン(ファッション事業本部)03-5413-1050)、その他スタイリスト私物