FILT

小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

音楽その13

2016.2.20

突然ですが、今この文章は東京ディズニーランドで書いています。
僕は「孤独のディズニー」と称して、けっこうちょくちょく一人でディズニーランドに来ては、特にアトラクションに乗るでもなく、パーク内でお茶したり、こうやって原稿書いたりしているのです。
周りからはなかなか変な目で見られますが、単にディズニー好きという以上に、これはこれで自分を変な環境に置いてみることで、いつもと違う景色が見えてきて、全く新しいアイデアが湧いたり、忘れていた感覚が蘇ったり、僕なりの頭のリフレッシュ法なのです。

ディズニーに居てすごいなと思うことの一つは、常に周りに、その世界に紐付いた音が鳴っているということです。
アドベンチャーランドにいれば南国のトロピカルな太鼓の音がどこからともなく聞こえてくるし、ウエスタンランドにいれば当然アメリカの開拓時代の音楽が聞こえてきます。

さらに今この原稿はワールドバザールのCENTER STREET COFFEEHOUSEというカフェで書いているのですが、ここは20~30年代の古き良きアメリカのアールデコ調のレストランなので、当時のビッグバンドジャズがBGMとして流れてます。
ちなみにメニューはカレーとか海老フライとか、いわゆるファミレスメニューで、これは20年代アメリカにはないのでは??と思うのですが、食べ物に関してだけはさすがのディズニーも正確な時代背景に合わすわけにもいかないんでしょう・・・。そもそも1920年代のアメリカ料理なんて、今食べたらとても美味しいようなものじゃないでしょうし、さらに言えばファンタジーランドとかトゥモローランドの食事なんて、本気で世界観に合わせたら、一体どんな料理出すんだ!?って感じですからね。

閑話休題

話は戻って音楽のこと。
家でCDを聞くとか、外でもイヤホンで自分の好きな曲を聴くのと違い、街中から自然と聞こえてくる音・音楽のことを、かの阿久悠さんは「街鳴り」と呼んでいたそうです。
昭和の時代、流行の街に行けば、その時流行っている音楽が自然と聞こえてきただろうし、酒場に行けば演歌が聞こえてくる、あるいは外国に行けば当然その国の音楽が聞こえてくる。
そうやって、あえて世界観など作らなくても、自然とその「街の音」というものが聞こえてきてたわけです。
それがウォークマンの登場、そして現在のiPhoneにいたるまでの過程ですっかり「街鳴り」はなくなって、各自が好きな時に好きな場所で好きな音楽を聴くようになった。
もちろんそれは決して悪い事ではありません。
自分の好きな曲を好きなシチュエーションで聴けるって、最高の時代です。

でも、あえて自分で選んだ音楽ではなく、その場所・その時代が出す「街鳴り」に耳を傾けてみる、おおげさに言うなら視覚も聴覚も肌の感覚も、すべてをそのシチュエーションに委ねてみる、というのもとても貴重な体験だと思うのです。

そんなことをディズニーランドのBGMを聴きながらふと気付いたりするのが、僕が「孤独のディズニー」をやめられない理由かもしれません。

backnumber

CONTENTS