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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

音楽その6

2015.7.20

今回は僕の仕事の一つである<選曲>についてです。

というのも、最近選曲する機会がすごく多いのですよ!

TFMのレギュラー『サタデーミュージックラボ』では毎週2曲選んでいますし、同じくレギュラーのフーディーズTV『小宮山雄飛のザ・フーディーズ』では番組内で流れる曲を、基本全曲選曲しています。

あとは雑誌とかから「この夏のドライブに合うお薦めの曲を教えてください」みたいな依頼がけっこう来たり、自分がプロデュースした虎ノ門ラウンジのBGMや、最近では知り合いの精進料理屋が新規オープンするというので、やはりお店のBGMを時間やシーンに合わせて400曲くらい(!)選曲したり、ホフディランのライブでも会場で流れてるBGMや入場SEなどは全部選んでます。

ということで、気づけば毎日なんらかの選曲をしてる日々なわけです。

といっても僕はいわゆるDJではないので、レコードとレコードをつないでお客をアゲアゲにして!なんてことはなく、純粋に曲を選んでいるだけです。

ただ、選んでいるだけといっても、これはこれでけっこう気を使うのです。例えば飲食店のBGMの場合、バーや居酒屋はまた違うでしょうが、いわゆる料理屋だったら、当たり前ですがメインは食事です。食事を邪魔するような曲ではいけないし、かといって全く邪魔にならない単なるインストの環境音楽なんかを流すだけでは意味がない。テーブルの会話が弾んで、食事がますます美味しくなるような、それでいて場の空気にすっと馴染んで気にならないようなものを選ばないといけない。

しかもお客さんは色んな人がいますから、楽しく食事を食べたい人もいれば、真面目な商談をしたい人もいるでしょうし、別れ話を繰り出してるカップルもいるかもしれない。

といって、DJのようにその場でお客さんを見て選曲できるわけじゃないですから、あらかじめどんなシーンにも合うような曲を選んでおかなければいけない。

また番組用の選曲の時は、ノリだけじゃなく歌詞の内容も気にします。洋楽を選ぶ時はついつい曲調で選んじゃいますけど、番組のBGMとなると、番組内容と歌詞が合ってないとおかしなことになる。

邦楽で置き換えてみれば分かりやすいのですが、例えば日本文化を紹介する外国の番組で、九州の屋台を紹介するシーンで「北酒場」がBGMだったら変ですよね。あるいは沖縄を紹介してるのに「津軽海峡冬景色」だったらね、日本人だったら誰しも変に思うでしょ。でも日本語が分からない外人が選曲すると、邦楽というだけで歌詞の内容が全然違う曲を選んでしまうこともあるわけです。

ラーメン紹介で「寿司食いねえ」がBGMだったら変ですよね(笑)。

まあ今のはかなり分かりやすい例ですが、それと同じで、日本人が番組BGMを選ぶ際に、歌詞を考えないで選ぶと、外人にしてみたらめちゃくちゃな選曲になってる可能性もあるわけです。

以前、知り合いの結婚式で二人の思い出の映像のBGMで、明るいポップスということでカーペンターズの『Breaking up is hard to do』が使われていたのですが、一聴すると和やかで映像にもすごく合っていたんですが、あの曲の歌詞ってずばり男女の別れなんですよね…。

今まさに幸せの絶頂の新婚カップルのバックで「お願い、さよならを言わないで♪我々の愛にもう一回チャンスはないの?」って、外人がいたら爆笑だったでしょうね。

ということで、一言で選曲といっても、単に曲調だけじゃなく、場の雰囲気や時には外国語の歌詞の内容まで考えて選ばないといけないのです。

さらに、これがスポンサー番組での選曲なんかだと、何気なく選んだ曲が、実は競合メーカーのCMに過去使われていたという理由で営業部にクレームが入るなんてこともあったりしますから、音楽以外の知識すら必要になってきます。

ということで意外と奥が深い<選曲>の世界、単にありものの曲を選んでいるだけだろ?と思われがちですが、これはこれで立派な<音楽>の一つと言えるでしょう。

ちなみに、結婚式でカーペンターズをかけたカップルですが、なんと数年後に離婚してしまいました!

ね、選曲って大事でしょ?


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