音楽その2
2015.2.27
ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!
2015.2.27
アコースティックギター(以後アコギ)とエレキギターの違いって何か分かりますか?
アコギはその名の通りアコースティックな生の音がして、エレキはもっとラウドでシャープな音のイメージかもしれません。
しかし音質の違い以上の違いは、アコギはそのままで音が鳴り、エレキはアンプにつながないと音が鳴らないということです。
エレキも実際には小さな音が弦から出てるわけですが、その小さな音をピックアップが拾い(考えてみれば、文字通り音を拾うからピックアップなんですよね)、その小さな音をアンプで増幅させて、大きな音として出してるわけです。
実は、これはアコギも同じことで、弦で鳴った音をアンプではなくアコギ本体の空洞で増幅させているのがアコギなんですね。
つまり弦から出る小さな音を木の箱で増幅させてるのがアコギで、電気を使ってアンプで増幅させてるのがエレキということですね。
今回はこの「増幅」というキーワードについて考えてみたいと思います。
そもそもアコギの時点でなぜ小さな音を増幅させる必要があるのか?
答えは簡単です、小さな音ではみんなが聞こえないからです。
空洞で増幅させなかったら、ギターは弾いてる本人くらいにしか音は聞こえないでしょう。
空洞で音を増幅させていることで、家族や友人と一緒にギターの音を楽しむことができるんです。
しかし、さらに多くの観客に聴かせようとすると、アコギの空洞だけでは増幅=音量が足りません。
そこで生まれたのがアンプです。
アンプで音をさらに増幅させることで、1人のミュージシャンがギター1本で何百人何千人に音を聴かせることが可能になったわけです。
つまり、アコギにしろエレキにしろギターというのは、そもそも弦の音を増幅させて、より多くの人に聞いてもらう前提で作られてる楽器と言えます。
そこで僕はいつも不思議に思うことがあるのですが、よくロックミュージシャンなんかがインタビューで、「曲は自分のために作ってる」とか「べつに多くの人に聴いてもらわなくてもいい」みたいな発言をすることありますよね。俺はロックだ、他人は気にしてないみたいな。
でも、そんな彼らがごく当たり前にギターを使ってる。
いや、あなたのその楽器って、音を増幅させてできるだけ多くの人に聴いてもらうためにできてるんですよ…と思うわけです。
ちょっと変じゃないですか?
わざわざ音を増幅させておいて、多くの人に聴いてもらわないでもいいって。
街頭でマイクを使って大きな音で演説しながら「みなさーん、僕のこの話なんて聞かなくていいんですよー!」って言ってるようなことですよね。
今となってはエレキもアンプも、単に音を増幅させるだけのものではありません、音量云々よりも音色に与える影響の方がむしろ大きいでしょう。
またバックトゥーザフューチャーのオープニングシーンのように、べつに誰一人お客さんがいなくても、自分のギターの音を巨大なアンプから爆音で出して、一人で悦に入るという人もいるでしょう。
でも元々はね、みんなに聴いて欲しくて、わざわざ音を増幅するために作られたわけですよ。
つまり楽器というのは、(当たり前ですが)そもそも「人に聴かせるため」にできているのです。
これ、音楽や楽器のすごく重要な要素だと思うのです。
今となっては、一人で部屋でパソコンを使って音楽作ることも可能だし、ヘッドホンで一人一人が音楽の世界に浸ることも可能です。
また本当に自分の趣味で誰にも聴かせずに曲を作ってる人や、ストレス発散で一人カラオケなんかに行ってる人もいるでしょう。
でも、もともとの音楽や楽器の歴史って、増幅の歴史。
つまり、人に聴いてもらうための歴史なんですよね。
ネット時代になって「発信」「共有」「拡散」なんてキーワードがよく使われますが、実は音楽も昔から同じことをしてたんですよね。
それが「増幅」ということなんじゃないかと。