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小宮山雄飛

小宮山雄飛

小宮山雄飛

撮影/野呂美帆
取材・文/安達 薫

ミュージシャン・小宮山雄飛が自分自身の事を語るこの連載。

最終回は、事務所設立やホフディランの活動再開について。

 2002年から2007年まで活動休止していたホフディラン。4年半の間、小宮山氏はどんな活動をしていたのだろう。

「いろいろなことを自分自身でやり始めて、方法を確立していった時期です。この期間でいちばん大きい出来事が、自分の事務所を立ち上げたこと。それまではアロハ・プロダクションズという事務所に所属していたのですが、最後の方からTシャツを作ったり、イベントを企画したり、自分でいろいろやっていたんです。だから早く自分の事務所を立ち上げたいと思っていて。渡辺くん(ワタナベイビー)はマネージャーにできるだけ面倒を見てもらいたい人だけど、僕はできるだけ何でも自分でやりたいタイプなんです。一から、会社の定款を作ったり、会計事務所とのやり取りをしたり、とても大変でしたが、新しいことをするのが好きなので、苦ではなくて。渡辺くんはソロとしてアロハ・プロダクションに残っていたのですが、たまに会うとマネージャーのグチを言っていて、相変わらずだなぁと思って聞いていました(笑)」

小宮山雄飛

事務所を立ち上げてからは

普通のミュージシャンとは

かなり違う活動になった。

「自分の事務所を立ち上げて、自分で企画から考えられるようになりました。プロダクションとレコード会社に所属していたときは、すでに決まった企画を遂行するような感じで、アーティストが企画を考えるようなシステムがなかったんですよね。それよりも曲を作ることの方が重要で。でも、立ち上げてからは企画書の段階からできるんです。そこからは普通のミュージシャンとはかなり違う活動になりました。たとえば、普通は何かのプロジェクトが動く場合、間に代理店なり代理人なりが入ってきます。でも、いきなり僕から連絡して、打ち合わせには僕が書いた企画書を持って、出演者本人が来ているわけです。なかなかないですよね。でも、直でやるのがおもしろいと思っていて。担当の方とも直で一緒に飲みに行った方が絶対におもしろいものができると思うので。それは昔は絶対できませんでしたね。雑誌連載も、それまではマネージャーを介してやり取りしていたのを担当編集者と直接やり取りするようになりました。そうすると、やり取りの中で偶発的にスピンオフ的な企画も生まれたりしておもしろい」

 今の活動の基礎がこの時期に生まれていた。
 具体的にはどんな仕事が新たに始まったのだろうか。

「ラジオのパーソナリティの仕事も、その頃に始まりました。ホフディランとしてやっていた『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)や、『アクロス・ザ・ビュー』(J-WAVE)などは、あくまでもレコード会社が決めるプロモーションの仕事としてやっていたので、直接スタッフと飲みに行ったり、反省会をしたりというのはほとんどないし、短期間だったんです。でも、今やっているラジオの仕事は、パーソナリティとして受けている仕事なので、スタッフともきちんと打ち合わせしてオンエアに臨むようになりました。 WEBのプロデュース業も大きいですね。僕はけっこう早い時期からWEBのことをやっていたので。CASIOのデジカメEXILIMのWEBサイトから始まり、今も続いているJTのWEB動画コンテンツ『シコウヒンTV』などもその頃から。まだタレント活動のようなものはそんなになかったので、ソロのバンドや、音楽プロデュース、イベント出演などもやっていました」

 小宮山氏率いるBANK$では、2004年にシングル、アルバムを発表。

「BANK$は、ボーカル以外はほぼ録り終えている、幻のアルバムがあるんです。いつかは出したいですね」

小宮山雄飛

しがらみがなくなり

自分たちで直に

動くことができるように。

 事務所を立ち上げて大きく変わったことは?

「仕事と遊びが全部一緒になりました。NIGOくんや元ナンバーナインの宮下(貴裕)くんなどファッション関係の人とも仲がよかったので、音楽以外のことも一緒にやりました。元WINOの吉村潤からはUMUを紹介されてBANK$をやったり、つるむようになって。そして、UMUから(大橋)慶三を紹介されて。niftyから話をいただいたPodcastの番組を3人で『こむぞう』として始めました。以前と比べるとしがらみがなくなり自分たちで直に動くことができるようになりました。そういうのがすごくおもしろいと思うんです」

 そして、4年半の活動休止期間を経て、2007年にホフディランは活動再開。大きな話題になった。

「半分だまされたんですよね(笑)。周りのミュージシャンたちの『渡辺くん(ワタナベイビー)最近調子いいよ』に、だったら今また一緒にやったらおもしろいかも、と。出演した映画『男はソレを我慢できない』の現場で声をかけました。でもその“調子がいい”というのは、僕が思ういろいろなことが右肩上がりという感じではなく、“地方でたくさんライブをやり、CDが15枚売れて喜んでいる”という意味だった(笑)。でも活動再開したことはよかったですけどね。アルバム『遠距離恋愛は続いた!!』も、すごくいいものになりました。 事務所を作って、自分でいろんなことをやるようになってから、ホフディランの方向性も明確に僕が決めるようになりました。ただ2人で半々で曲を持ち寄ってもまとまらないので、1stアルバムの時のような元気なワタナベイビーの感じを出したいと思って。曲そのものというより、キャラクターとしてワタナベイビーを押し出すような。その感じは最新アルバム『帰ってきたホフディラン』にも続いています。古巣・ポニーキャニオンから出せるようになったので、渡辺くんは自分を素材としてより信頼して任せてくれるようになりましたね」

 デビューして21年目。音楽にとどまらず、WEB、食、街……と、ジャンルレスにコンテンツ化する小宮山氏。これからどんな新しいことで私たちを驚かせてくれるのだろうか。

小宮山雄飛 こみやまゆうひ ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「Rethink Lounge TORANOMON」のプロデュースなど幅広く活躍。NEWアルバム『帰ってきたホフディラン』がポニーキャニオンより発売中。その他、詳しくはhoff.jp

撮影/野呂美帆
取材・文/安達 薫