撮影/若木信吾
取材・文/小池貴之
撮影/若木信吾
取材・文/小池貴之
あんぽんたんという言葉から何を連想するのか。きっと、人それぞれだとは思うが、どことなく愛らしい感じがするのは気のせいだろうか。漫画家であり、現在はテレビやラジオなどでも活躍中の“くらたま”こと、倉田真由美はこう捉える。
「あんぽんたんという言葉は、決していい言葉ではないんですけど、悪く言うときに使うものでもない。何となく柔らかくて不思議な言葉。今の世の中、ちょっとあんぽんたんなぐらいの方がいいのかもしれませんね。私は番組のコメンテーターをすることもありますけど、変にかしこぶることもないですし、知らないことは知らないと言える程度でいたいなと。自分はこう見られたいという思いが強すぎると、苦しくなってしまいますからね。他人から見られたときに、恥ずかしいなとか、アホだなって思われることをあまり恐れないようにしています」
普段から、あんぽんたんでいるために必要なものは何なのか。
「結局、ユーモアだと思うんですよ。どんなにシリアスな話をしていても、笑いがあると逃げ道になる。ビートたけしさんや松本人志さんが最たるものだけど、番組などで時事問題に関してズバズバものを言うじゃないですか。でも、やっぱりお二人とも、笑いだったりガス抜きをする部分があるから、どんなことを言っても肩肘張らずに聞くことができるんです。電気の“アース”のような、どこかへ逃がすものが案外大切だったりするんですけど、日本人はそういうガス抜きをするのが下手ですよね。何でも真正面から受け取ってしまって、勝手に苦しくなってしまう。私自身、良かったなと思うのは、ギャグ漫画を描くという道を選んでそれを生業にしたこと。だから、どんなことも笑いに変えるという、ガスを抜く作業が自然と身に付いたのかなと思っています」
あんぽんたんな男性は、意外と女性に愛される…!?
「私はこれまで“だめんず”の生態を描いてきましたけど、彼らは女性と付き合えている人たちなんですよ。意外とどこか、女性に受け入れられるような、あんぽんたんなところがあるんでしょうね。世の中には、女性と付き合えない男性もいますから。そう考えると“だめんず”たちって勝ち組なんじゃないかなって思います。なんだかんだ言っても彼女がいますからね。そんな“だめんず”と付き合っている女の人に話を聞いていると、彼女たちは笑いながら恋人のダメっぷりを話すんですよ。きっと、彼らが愛される理由ってそういうところなんでしょうね。笑えるダメな奴、笑えるあんぽんたんってことなんだろうなと。中には全く笑えないケースもありますけど(笑)。笑いにできるぐらいで収まっているダメっぷりだったら、変に恨まれることもないと思います」
男性の場合は、ダメなところが逆に愛されたりすることもあるが、女性のあんぽんたんぶりは、どんな感じなのか気になるところ。
「私の女性の友達は、だいたいみんなあんぽんたんですよ(笑)。いろんなパターンがありますけど、お酒を飲みすぎて翌日目が覚めたらどこだかわからないところにいたとか。もちろん、隣には男性がいて……。飲み友達にそういう経験をしたことがある人が多くて、ホントになにも覚えてないらしいんですよ。いろいろ自分で確認するんだけど、なにがあったのか分からないし、思い出せない(笑)。本人的にはセーフだと思っているらしいんですけど、それってどうなのって(笑)。でも、そんなやらかしてしまったエピソードも、笑いにできるかどうかが大事。女性の場合も全部受け入れて、変に卑屈になったりせず、何でも笑いに変えられる方が男性から愛されるような気がします」
倉田真由美 くらたまゆみ 漫画家。1971年生まれ、福岡県出身。2000年から『だめんず・うぉ~か~』の連載をスタートさせ、その名が知られるように。現在は執筆活動のほか、『ビビット』(TBS系列)や『大竹まこと ゴールデンラジオ!』(文化放送)など、テレビやラジオにも出演。
撮影/若木信吾 取材・文/小池貴之