撮影/Jan Buus
取材・文/鈴木宏和
撮影/Jan Buus
取材・文/鈴木宏和
昨年、結成25周年を迎えたロック・バンド、フラワーカンパニーズ。その間には、メジャー・レーベルにも所属事務所にも契約を切られたり、ドラマーのミスター小西が骨折して一時期ライブの離脱を余儀なくされたりと、逆風にあおられることもあった。
「長くやってきたんだなとは思うけど、生活するためだけにやってるわけじゃないというか、そういう仕事とは意味合いが違うと思うんだよね。やりたいことを、やりたくてやってるから。だから、『苦労してますね』とか『車で全国を回って大変ですね』とかいろいろ言われるんだけど、本人としてはそうでもなくて。逆に、楽してすみませんっていう」(マエカワ)
「普通に働いてる人たちのほうが、よっぽど大変だ。サラリーマンが一番大変だよ」(鈴木)
「毎朝ちゃんと起きて、決まった時間に出勤してって、ちょっと考えられないもんね」(竹安)
「本当にそう。それがイヤだからバンドをやって、そして食えてるんだからもうラッキーのひと言ですよ」(鈴木)
THE BACK HORNやフジファブリック、クリープハイプなど計13組が、愛とリスペクトたっぷりに楽曲をカヴァーしたトリビュート・アルバムでも注目を集めた彼らが、通算15枚目となるオリジナル・アルバム『Stayin' Alive』をリリースする。
「25周年っていうのもあるし、全員45歳っていうのもあるし、クサいけど生きるっていうことですよね。この年齢になってくると、考えるんですよ。お別れが多いし。死ぬことを考えるのは、生きることを考えることだから、タイトルを『Stayin' Alive』にしました。まあ、自分たちの今を表現するというのは、ずっとそうなんですけど」(鈴木)
「今回のアルバムはそれがより強く出てるね」(マエカワ)
フラワーカンパニーズが書くメロディ、そして歌詞の素晴らしさは今さら言うまでもないことだが、ソウルにファンク、60'S風ポップ、ハード・ロック、ラテン、オペラ…と自在にジャンルを横断しながら、耳を奪うメロディに乗せて、人生のリアルと人間の、男の生きざまを描き出す今作の完成度の高さは圧巻のひとこと。ゲスト参加している斉藤和義が以前、某番組の特集に寄せたコメントを拝借して声高に言いたい。「フラカンを聴きやがれ!」と。
「僕らのアルバムの中で、一番バランスよくできた作品なんじゃないかな。曲はたぶん今までで一番バラエティに富んでるし、ほとんどの曲の歌詞に“死”っていうキー・ワードが出てくるんだけど、全然重苦しくなくてむしろ軽快で、このバンドのあり方というか…歌詞は暗いけどバンドは暗くないし、ライヴも暗いかと思いきや、そういうライヴは一切しないんで、自分たちの姿が一番わかりやすく出たアルバムかなって思いますね」(鈴木)
そんな愛すべき4人の“ムダ”観がまた彼ららしいというか、なんとも痛快かつ感動的で惚れ直してしまうのだ。
「骨折して、自分がやってきたことの大切さを知ったというか。今はもう1度やれてることのありがたみを感じてるし。本当にムダなことだったんですけどね」(小西)
「ムダじゃないよ。ウェブのニュースでトップになっちゃって名前が全国区になったんだから(笑)」(マエカワ)
「まあでも、そもそもバンド自体がすごいムダですよ。ムダの固まり。今なんかひとりで全部できるじゃないですか、宅録で。それをわざわざ4人で集まって、リハしてグルーヴがどうしたとか言って、一生懸命合わせて」(鈴木)
「ツアーに出て、毎日でかいアンプを降ろして」(竹安)
「そう。しかもわざわざ4人で車で回って」(鈴木)
「でも、ムダなこともないとダメというね」(マエカワ)
「後々効いてくるというのがあるんです。効率だけ求めてその時の損得でばっかりやってると、薄っぺらくなるっていうか。ムダだと思っていたけど、『あれがこういうことだったのか』って気付くことが多いんですよね」(鈴木)
フラワーカンパニーズ 愛知県出身。地元名古屋の同級生、鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(Ba)、竹安堅一(Gt)、ミスター小西(Dr)の四人からなるロックバンド。95年メジャーデビュー。01年にはメジャーを離れ、自らのレーベルを立ち上げる。14年に「メンバーチェンジなし&活動休止一切なし」の四人揃って結成25周年を迎える。最新作は1月21日に発売される「Stayin' Alive」。25年を経てもなお、色褪せることのないロックへの熱い思いと、25年経たからこそ奏でられる強い思いが凝縮されている。
撮影/Jan Buus 取材・文/鈴木宏和