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清原果耶

撮影/Nico Perez

 古典落語の「柳田格之進」を題材にした映画『碁盤斬り』で演じたのは、父と共に江戸の長屋で慎ましく暮らすお絹という武士の娘だった。

「お絹はとても愛すべき人でした。健気で優しくて、父上を敬い、慕っているからこそ、自分を犠牲にしてでも、すべてに耐えて生きていこうとするんです。お絹のまっすぐな性格はきっと親譲りで、自分の信念のために思いを曲げずに貫き通す父上の背中を見てきたことが、お絹の生き方にも刻まれていると強く感じました」

 お絹の父で謹厳実直な武士の柳田格之進を演じた草彅剛とは、今回が初共演となる。

「撮影に入る前はけっこう緊張していて、草彅さんとこれから現場でご一緒する上で、どうやって親子関係を築いていけばいいのか悩んでいたんです。でも、草彅さんに“清原果耶です。よろしくお願いします”と最初にご挨拶させていただいたら、“お絹ちゃんだね。もう清原さんは僕の娘だから。あははは”と、笑いながらサラッと助け舟を出してくださって。その日から、娘として現場にいれば、それ以上のことは何もいらないんだなと思えるようになったんです。自分の思うままに演じればいいんだと」

清原果耶

 現場では、俳優・草彅剛の凄みも目の当たりにした。

「劇中の格之進はずっと糸を張っている状態に私は見えて。だから、格之進を宿す草彅さんも、きっと精神的に大変だろうなと思ったんですけど、その中でもしっかりお絹と向き合ってくださいましたし、スタッフさんともよくお話をされていました。ストイックでありながら、他人に対して一切壁がなく、フランクでもある。多面的な魅力を持つ方でした」

 また、本作を手掛けた白石和彌監督にはこんな印象を抱いたという。

「役者に寄り添った言葉選びをしてくださる方で、撮影を振り返ると感謝しかありません。これまでハードな作品を撮られている方なので、お会いする前はどんな方なのだろうと緊張していたんですけど、すごく優しくて、現場の雰囲気や空気感、キャストとの距離感を大切にしてくださる方だなと感じました。現場ではお絹の気持ちのベクトルや温度感などについて、白石監督とお話しすることもありましたが、草彅さんが格之進として常にいてくださったこともあり、私も難しく考えず、ナチュラルにその場にいることができました」

 自然体で役と向き合うことにより、リアルな感情が紡がれていく。本作のお絹は、観客にどう受け止められるのだろうか。

「台本を読んだときに、私はお絹のひたむきさにすごく胸を打たれて、その姿がちゃんと届くように表現できたらいいなと思いました。でも、受け取り方って人それぞれだと思うんです。どう感じていただいてもいいですし、それが映像作品の面白いところなのかなって。ただ、私が演じる人物の心が動いた時に、観てくださった方の心も共鳴するように動いたら、それはすごく嬉しくて、意味のあることなのではないかなと思います」

 映画では、囲碁を軸とした人間模様が描かれる。

「お絹も囲碁を打つシーンがあったので、まずは囲碁棋士の先生に教わるところからはじめて、なんとなくですけど、自分でもだんだんと碁石を置くところがわかってきました。撮影の合間には、弥吉役の中川大志さんと対戦をしたんです。これまで囲碁に触れる機会がなかったので、自分の中でも新鮮な体験でした」

清原果耶

 最後に、本作の魅力について聞いてみた。

「誰もが楽しめる映画になっています。囲碁や落語に詳しい方は、また違った見方もできると思うんですけど、まったく知らなくても人間ドラマの魅力やキャラクターの魅力がたくさん盛り込まれているので、気軽に見ていただければと思います。それに、時代劇というと堅い印象を抱くこともあるかもしれませんが、すでに映画を見た方から“新しい時代劇を見た”とおっしゃっていただくことも多かったんです。見ごたえはあるんですけど、とても見やすい映画になっていると私も感じたので、年代を問わず多くの方に映画館へ足を運んでいただきたいです」

『碁盤斬り』
2024年5月17日(金)より全国公開
古典落語の「柳田格之進」をベースに監督・白石和彌、主演・草彅剛で映画化。身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪った浪人の柳田格之進(草彅)は、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹(清原果耶)と江戸の貧乏長屋で暮らしていた。囲碁を通じて萬屋の亭主・萬屋源兵衛(國村隼)と親交を深める中、悲劇の冤罪事件の真相を知り、復讐を決意する。
(配給:キノフィルムズ)
https://gobangiri-movie.com/
(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

清原果耶 きよはらかや 女優。2002年生まれ、大阪府出身。2015年にNHK連続テレビ小説『あさが来た』でデビュー。2021年の『護られなかった者たちへ』で第45回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『線は、僕を描く』『1秒先の彼』、ドラマ『おかえりモネ』『ファイトソング』『霊媒探偵・城塚翡翠』など。2023年に初舞台「ジャンヌ・ダルク」で読売演劇大賞の優秀女優賞と杉村春子賞を受賞。出演映画『碁盤斬り』と『青春18×2 君へと続く道』が全国公開中のほか、公開待機作に『片思い世界』(2025年公開)などがある。

撮影/Nico Perez

ヘアメイク/赤松絵利(ESPER) スタイリング/井阪 恵(dynamic)
衣装協力/ジャンプスーツ¥77,000テーロプラン(テーロプラン カスタマーサポート)、リング(右手小指)¥29,700リューク、リング(左手人差し指)プライマル、イヤリング(スタイリスト私物)