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松坂桃李
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撮影/三部正博

松坂桃李

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 広島を舞台に暴力団と警察の攻防戦を描いた映画『孤狼の血』の続編となる『孤狼の血 LEVEL2』が8月20日に公開される。前作に引き続き、刑事の日岡秀一を演じた松坂桃李は、作品が無事完成した喜びに浸っていた。

「コロナ禍でこの映画を作ることができた喜びというのはひとしおですね。それを強く感じたのは撮影のアップの日でした。オール広島ロケの最終日、監督あいさつで白石(和彌)さんが号泣したんです。監督とは今回が3作目なんですけど、あそこまで涙を流す姿を初めて見ました。最悪撮影ができないかもしれないという状況の中で、なんとかみんなの力で作り上げることができたという安堵感と共に、映画を撮れる日常がこんなにも嬉しいことなんだと、監督の涙で改めて実感しました」

松坂桃李

 撮影中は白石監督の映画に対する思いに触れることもあったという。

「日本映画をより色濃くしていこうという白石さんの強い意志を感じました。その思いにはとても共感できるし、白石さんの刻んでいく映画の歴史に自分も居続けたいと思いました」

 役所広司演じる大上章吾の役割を、今作では日岡が受け継いだ。

「相当プレッシャーもありました。日岡としてガミさんの立場になってみると“あの人はこれだけのことをやっていたのか”と思うんです。改めてすごさを感じましたね。演じる上では、前作の終わりからLEVEL2までの間に日岡がどういう思いを抱いていたのか、クランクインの前に前作の台本を読み返しながら、空白を埋める作業を行いました。日岡の覆されてしまった正義のバランスの支点をどこに置くかということについて、自分なりの答えを出して現場に入れたと思います」

 今作で日岡と血みどろの争いを繰り広げるのは、鈴木亮平演じる五十子会上林組の組長・上林成浩。大上の意志を継いだ日岡は、自身の正義を信じて圧倒的な暴力と対峙していく。

「前作では警察の中でのルールが日岡の正義でした。そこからガミさんに影響を受けて、日岡なりの警察のルールからはみ出た正義を作っていくんですね。でも、未完成というか、穴がある。ガミさんには及ばない成熟していない部分が彼の人間臭さにつながっていく。僕はそこがとても日岡っぽいと思うんですよ」

 日岡に自分を重ねることもあったという。

「自分の意志を貫き通そうとあがく姿は近いものを感じます。撮影中はなるべく日岡に寄せていって、日岡という人物を体の中に留めておくように意識していました」

松坂桃李

 松坂自身が考える正義とは、いったいどういうものなのだろう。

「時に自分を律したりもすれば、時に自分の思いを遂げさせるためのものでもある。我を通したり、都合のいい方向に持っていったりするための言葉にもなり得ますよね。日岡にも上林にもそれぞれの正義があるよう、人によって正義を測るモノサシが違うからこそ、自分の考えを持っていないといけないんだと思います」

 最後に本誌で連載中の白石監督から預かった質問を投げかけてみた。それは「死にたいですか?」という日岡の未来を尋ねる言葉。

「僕の中では“死”だと思っています。シリーズ化するかどうかは置いておいて、ガミさんから譲り受けたライターが日岡からまた別の誰かに渡っていくというのも面白いかもしれませんね」

『孤狼の血 LEVEL2』
2021年8月20日(金)全国公開
平成3年、広島県呉原市。3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれ殺害されたマル暴の刑事・大上の後を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡(松坂桃李)。しかし、刑務所から出所した上林組の組長・上林(鈴木亮平)によって、その危うい秩序が崩れていく。
(C)2021「孤狼の血LEVEL2」製作委員会
(配給:東映)
https://www.korou.jp/

松坂桃李 まつざかとおり 1988年生まれ、神奈川県出身。2009年に『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。以降、さまざまなドラマや映画で活躍。2019年の『新聞記者』では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。白石和彌監督作品は『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』に続いて、『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日公開)が3作目の出演となる。公開待機作に『空白』(9月23日公開)、『耳をすませば』がある。

撮影/三部正博

ヘアメイク:AZUMA(M-rep by MONDO artist-group) スタイリング:丸山 晃
衣装協力:スーツ ¥330,000、シャツ ¥46,200(共にエルメネジルド ゼニア/ゼニア カスタマーサービス03-5114-5300) その他スタイリスト私物