その佇まいは清らかで、どこまでも澄んでいた。いい意味で、無色透明。純真無垢な小児科医にも超能力者にも、戦国時代の戦士にも溶け込める理由が、なんとなくわかったような。
　紀元前245年、春秋戦国時代の中国を舞台にした歴史エンターテイメント『キングダム』で主人公・信を演じる。これまでにないくらい熱く、野性的なキャラクター。原作は累計発行部数3800万部突破の人気漫画だ。
「最初に漫画を読んだとき『こいつはどこまで成長していくんだ！』と思いました。信は無限の可能性を持ち、夢に向かっていく、とにかくまっすぐなキャラクター。だから僕も難しいことは考えず、全力でぶつかっていった」

　戦争孤児として育った信は「天下の大将軍になる」ことを夢に、親友の漂（吉沢亮）と、自己流で剣術を学んでいく。
「野生味があり、かつ感情をのせたアクションにしようと監督やアクション監督と話し合いました。でもこれが難しかった。怒りの感情だけで闘うと、技術的な動きと合わなくなってしまうんです。頭で考えながらも、感情を高ぶらせて動くことに苦労しました」
　誰よりも高く飛ぶ――信の戦闘スタイルを演じるため、ワイヤーアクションにも挑戦。共演者とトレーニングを重ね、体もかなり絞った。
「『ジョジョ』の撮影時から10キロくらい落としました。なにより夢を一緒に追いかけるはずだった漂を失うところから信の戦いは始まっている。その思いが常にあることを、全シーンで意識していました」

　漂との別れのあと、信は漂と瓜二つの秦国の王・嬴政と出会う。感情をむき出しにする“動”の信と、冷静沈着な“静”の嬴政。対照的な二人の演技も見どころだ。
「感情を爆発させる演技は、段取りどおりにやると、リアルじゃなかったりするんです。テストで全力でやってしまうと、本番で出せなかったり。でも政のクールな芝居も、それはそれで難しいんですけどね」
　漂・嬴政役の吉沢とは共演も多い。アクションの呼吸もピッタリだ。
「何作も一緒に仕事をしてきたし、信頼もできる。二人で完成した映画を観て『ヤバいね』『スケールでかいね』と言い合ってました（笑）」
　最強の敵たちと戦いながら、成長していく信を見てほしいという。
「信のようなタイプに憧れる気持ちは、僕にもある。それにシンプルな気持ちに従って動くことは、僕もけっこう大事にしていますから」

　原作は役を演じるうえで最も大切な指針になる。
「漫画の切り取られた一瞬の表情は、演じる際の参考になります。そうした表情と表情の間の感情の流れを読み取って、映画として形作っていく。漫画の映像化はそういう作業でもあると思う。だから原作は必ず読みます」
　今回のテーマは「朝を、生きる。」。が、実は朝は苦手。
「起きられないんです。最近はまず、お風呂に入って、無理矢理目覚める。コンタクトをつけて、コーヒーを飲む。それでやっと、です。本当は朝一番にランニングとかができたらいいんですけど、無理ですね」
　24歳。希望に満ちた「朝」の時代は、まだ始まったばかりだ。

『キングダム』
2019年4月19日（金）全国東宝系にてロードショー
週刊ヤングジャンプにて連載中の原泰久による同名大ヒットコミックを山﨑賢人主演で映画化。中国春秋戦国時代を舞台に、大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信と、中華統一を目指す若き王・嬴政の絆と戦いを描く。
（配給：東宝）
https://kingdom-the-movie.jp/
（C）原泰久／集英社
（C）2019映画「キングダム」製作委員会

• 佐藤仁美