気がつけば52歳。ふと、理想の“おじさん像”を考えてみる。
「僕の中で明確なイメージがあって、それはとんねるずのふたりなんです。僕と10歳ほど離れているんですけど、木梨憲武さんのかっこよさは何事にも本気だということ。アートも歌も本気で取り組んでいて、それが仕事になっていく。間近で見ていて心からかっこよさを感じます。一方、石橋貴明さんの醸し出すおじさん的なかっこよさもあって。それは、大人の仕草なんですね。言うときはズバッと言うけど余計なことは言わない。そういう体育会系のかっこよさにも憧れます」
自身も、歯に衣着せぬ発言で注目を集めることがある。
「でも、僕の場合はプライベートで意外と黙っちゃったりもするんです。あれはテレビやラジオだからという部分もあって、カンニング竹山という人物を演じているようなところもある。どこかで僕が”こう生きたい”と思っている姿なのかもしれません。結局、魅力的な大人って、一番は自分のやりたいことをやっている人なんですよ。そうじゃないと人はついてこない。とんねるずのふたりだって、やりたいことをやっているから人がついて来る。それって、いわゆる群れたりつるんだりする行為とは、本質が違うと思うんです」
かつては、毎晩のように後輩を引き連れて飲み歩く“つるむおじさん”だったが、最近はひとりでいることも増えてきた。
「それこそ10年くらい前はやっかいなおじさんだったと思うんです。後輩の芸人に酒の席ですげぇ怒るし、説教もするし。でも、後輩たちも結婚して家庭を持ったり、子どもができたりで、最近は集まることも少なくなってきました。こっちも気を使うし。それにひとりでいることが楽になってきた。例えば、誘われても“いいよ、今日はひとりで飲むから”みたいに断ることもあって、どんどん“ひとりっていいじゃん”と思うようになってきました」
ある大物作家の佇まいにも影響を受けている。
「僕、競馬場で何度か浅田次郎先生をお見かけしているんです。いつも真剣に予想していらっしゃるから、声をかけたことはないんですけど。ピシッとしたスーツ姿で、ずっとひとりでモニターや競馬新聞と格闘されている。趣味の世界に入り込んでいる先生の姿を見ていると、とてもいい遊び方だなと思うんです」
競馬を筆頭に、野球やキャンプにバイクまで、趣味は多岐にわたる。7月には、自身の趣味についてまとめた書籍『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』が発売された。
「趣味に対しては若い頃よりも本気になっていると思います。今のほうが、より趣味を楽しみたいという気持ちが強い。歳を重ねて図太くなったのもあって、“遊ぶからそっちでやっておいて”とか、“仕事よりも遊びだ!”みたいな趣味優先の考え方になってきていますね。昔はもっと焦りながら遊んでいた気がするんだけど、最近はそれこそ憲武さんのように、遊びが仕事にもなってきているので、マイペースでやってます。この間、ちょっと時間があったから種子島まで行ったんです。船で釣りして酒飲んで、楽しんだんだけど、自分のYouTubeで配信する用の動画も撮影したりしたので、遊び半分・仕事半分でもある。段取りを組んだり、工夫して物事を成立させたりするのが好きなんでしょうね。『探偵!ナイトスクープ』のロケも、途中でうまくいかなくなったら、ディレクターや技術さんと相談しながら、ああだこうだ言いながら最終的にはなんとかしている。あの番組では、そういう部分が相当鍛えられたと思います」
トーク番組『竹山ライブショー』のライブ配信や音楽ユニットでの活動など、仕事と趣味の境界は曖昧だ。誰にはばかることなく、やりたいことをやりはじめている。
「誰しも若いときは仕事や子育てなどで忙しいですよ。趣味にかまけている時間なんてないと思っちゃうんだけど、50歳を過ぎてくると少し余裕が出てくる。ここからでも十分遊ぶことができますよ。それに、この年齢になってみて思ったのは、人生があと少ししかないってこと。僕なんかは平均してあと20~30年ぐらいでしょ。このまま何もせずに死んじゃっていいのかって、よく思うんです。人生の後半戦は、ひとりでやってみたかったことを始めてみるのがいい。そうすると世界が広がっていく。まだ遅くないですから、どんどん遊びましょうってことは、みなさんに言っておきたいです」
『カンニング竹山の50歳からの
ひとり趣味入門』(ポプラ社)
お笑い芸人としてさまざまなメディアで活躍するカンニング竹山が、競馬、バイク、野球観戦、YouTube制作など、今もっともハマっている9つの趣味を熱くディープに語る。
カンニング竹山 芸人。1972年生まれ、福岡県出身。1992年に中島忠幸とお笑いコンビ・カンニングを結成。現在は『ゴゴスマ』(CBC)、『ノンストップ!』(フジテレビ)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『カンニング竹山のイチバン研究所』(MXテレビ)などにレギュラー出演中。また、書籍『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』(ポプラ社)が発売中。
スタイリング/佐藤美紀