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 6月3日に公開される水谷豊監督作品の『太陽とボレロ』に、チェロ奏者の役で出演。映画の話は本人から直接声をかけられたという。
「『相棒』の撮影でご一緒したときに、まずは豊さんから“今度撮る映画でやってもらいたい役がある”と。そのときは詳しいお話をされなかったんですけど、豊さんがそう言うのであれば、どんな役でもやらせていただきたいという気持ちでした」
 そもそもの出会いは、1997年にテレビ朝日系で放送された『流れ板七人』という連続ドラマだった。
「もう25年前ですね。お互いに板前の役だったんですけど、豊さんが“梨堂竜二”という役で、僕は“明神渡”という梨堂さんについていく青年の役でした。自分の腕と包丁1本で全国の板場を流れていく話なので、基本的には地方を巡るロケでの撮影だったんです。函館からスタートして、全部で9ヵ所を巡りました。何週間も寝食をともにするうちに、豊さんの人となりに惚れて、付き人のようにぴったりと張りついていました(笑)。役者として何かを学ぶためというよりも、一緒にいたいと思わせてくれる方ですから」
 尊敬する大先輩がメガホンを執る本作は、地方のアマチュア交響楽団が舞台のヒューマンドラマだ。
「撮影では一人一人の動きをセリフから口調、所作に至るまで豊さんが目の前で一度演じてくださいました。たぶん豊さんの中で最初から完成形がきちんと見えていたと思うんです。我々はそのイメージに動きやセリフを合わせていくというお芝居でした。ただ、豊さん自身も指揮者の役なので、楽器の演奏は自分が頑張らないといけない。演奏シーンは吹き替えなしですからね。正式にオファーをいただいたときに、これは大変だぞと思いました。当然、これまでチェロには触ったこともなかったですから、練習もゼロからのスタートです」
 プロとのマンツーマンや自宅での練習は、想像以上に大変だったと振り返る。
「チェロをお借りして、半年以上は練習しました。弦を押さえたり、弾いたりすることはできるようになるんですけど、ちゃんとした音がなかなか出ない。それでも、やっていくうちに手応えみたいなものはありました。自分の部屋にこもって練習していたんですけど、それをリビングで聞いていた妻が“最初はのこぎりみたいな音がしていたけど、だんだんうまくなっている”と、褒めてくれました(笑)」
 長い夫婦生活の中では、褒められることもあれば、叱られることも。
「3年前の件ではかなり叱られました。当然ですが、相当迷惑もかけてしまったので。今はお菓子の食べ過ぎを叱られています」
 スキャンダルを経てもなお、ドラマやバラエティからのオファーが途切れないのは、実直に仕事に取り組める強さが理由なのかもしれない。
「不器用なので、逆にそれしかできないんです。仕事に注ぐエネルギーの配分ができないというか。どんな仕事も全力を出さないと気持ち悪いんですね」
 過去には、全力を出しすぎて叱られたこともある。
「夏場の時代劇で、走る撮影だったんですけど、テストでも力いっぱい走ってしまったんですね。そうしたら、殺陣師の方から“本番で全力疾走しなきゃいけないのに、テストで思いっきり走ったらダメだよ!”と。本当におっしゃる通りです」
 最後に、強くなることの本質について、こう話す。
「強くなるってある意味、自分の弱さからかけ離れていくことだと思うんですね。叱られたり、怒られたりして経験を重ねると、自分が強くなった気がして弱かったときのことを忘れてしまいがちだけど、逆に自分の弱さを覚えていられる人が本当に強い人なのかもしれません」
映画『太陽とボレロ』
2022年6月3日(金)全国公開
水谷豊監督作品第3弾。地方都市で18年間続くアマチュア交響楽団・弥生交響楽団の解散が決まる。楽団を主宰する花村理子(檀れい)は、最後のコンサートに向けて奔走するが、個性的な楽団のメンバーに振り回されてしまい…。
(配給:東映)
https://www.sun-bolero.jp/
(C)2022「太陽とボレロ」製作委員会
原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)ではMCを担当。6月3日に公開される映画『太陽とボレロ』では、チェロ奏者の与田清を演じる。
衣装協力/MEN'S BIGI
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