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森 七菜

撮影/若木信吾

 映画『四月になれば彼女は』の撮影で巡ったのは、ボリビア、チェコ、アイスランドなどの国々。どの場所も鮮烈な印象を残したが、特にボリビアで見たウユニ塩湖の風景は、いまも目に焼きついているという。

「まるで天国みたいな場所でした。日本から2日間かけて行ったんですけど、逆に2日で天国に来られるんだなって。ボリビアはテレビ番組の収録で再び訪れる機会があったので、チェコとアイスランドにもいつかまた行きたいですね。撮影の時は観光する時間がなくて、すぐ帰ってきてしまったので」

 本作で演じたのは、写真を撮りながら世界中を旅する伊予田春という女性。春は旅先から、かつての恋人に手紙を送る。

「人生が一貫している人だと思いました。春が旅に出た理由も、そこには強い意思があるし、その真っ直ぐさが見る人に誤解なく伝わればいいなと思っています。手紙を送ったのだって、再会したかったわけじゃないし、いまの生活を邪魔したかったわけでもない。自分の生き方やモットーを貫き通しているだけなんです。春はとても清らかな人で、私の中に淀みがあるとそれがすべて映ってしまいそうで、撮影期間中は彼女と同じ清らかな気持ちでいることを心がけました」

森 七菜

 春からの手紙を受け取るのは、佐藤健演じる精神科医の藤代俊。映画では大学時代の春と藤代の恋模様も描かれる。

「佐藤さんと同じ大学生の役をやるとは思っていなかったので、とても新鮮でしたし、貴重な経験でした。しゃべり方とか、絶妙な大学の“先輩感”を出してくださって、やっぱりすごい俳優さんなんだなと。春と藤代は大学の写真部だったので、私と佐藤さんもカメラが撮影の合間のコミュニケーションの一つになっていました。何をお話したかはあまり覚えていないんですけど、撮った写真のことはすごく覚えていて、いい写真がたくさん撮れました。あと、佐藤さんがピントを合わせるのが苦手らしくて。貸してください、全然違うじゃないですか、みたいなやり取りはしました(笑)。実は、私が劇中で撮ったカメラを構えている佐藤さんの写真が、宣伝で使用する<恋するビジュアル>に採用されているんです」

 大学時代の春と、世界中を旅する春には、およそ10年の隔たりがある。

「大学時代の春は、いまが一番楽しくて幸せで、毎日眩しくて、これからもそれが続くと思っていて。でも、10年後の春は、どこか達観しているというか、過去のことも、いまのことも遠くから見ている感覚なんだろうなと思いながら演じていました。演じ分けということではないのですが、日本での撮影の1年後くらいに海外で撮影をしたので、年月を経た春の気持ちに寄り添えたと思います」

 今回、本作に参加して、こんな感想を抱いたという。

「新しいジャンルの映画だと思いました。ラブストーリーなんですけど、その次の話なんです。出会って、恋をして、結ばれて、その次から始まるラブストーリー。春は恋する女の子として登場するんですけど、いわゆる一般的なラブストーリーとは立場や振る舞い方も違いますよね。演じていてすごく楽しかったです」

森 七菜

 映画をきっかけに、カメラが趣味の一つになった。役作りを兼ねて撮影した写真の何枚かは、予告編にも使用されている。

「目黒川で撮った桜の写真が使われていて、すごくうれしかったです。たくさん撮っておいてよかったなって。桜は好きなんですけど、あまりお花見はしたことがないんです。友達の家の裏に咲いている桜を見に行ったことがあるくらい。春と同じPENTAXのカメラを買ったので、今年は外に出て、桜と人物の写真をたくさん撮りたいと思っています。いつも友達と、公園に写真を撮りに行こう! と盛り上がるんですけど、行く直前に、なんか今日はやめとく? みたいになってしまうので(笑)」

『四月になれば彼女は』
2024年3月22日(金)より全国ロードショー
川村元気のベストセラー小説を俊英・山田智和が映画化。四月、婚約者の坂本弥生(長澤まさみ)と結婚の準備を進めていた精神科医の藤代俊(佐藤健)のもとに、かつての恋人・伊予田春(森七菜)から手紙が届く。“天空の鏡”と呼ばれるウユニ塩湖からの手紙には、十年前の初恋の記憶が書かれていた。そんな折、藤代の前から突如、弥生が姿を消す。
(配給:東宝)
https://4gatsu-movie.toho.co.jp/
(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

森 七菜 もりなな 女優。2001年生まれ、大分県出身。2019年7月公開の映画『天気の子』で天野陽菜役に抜擢され、注目を集める。近年の主な出演作に、映画『銀河鉄道の父』『君は放課後インソムニア』、ドラマ『真夏のシンデレラ』、Netflix映画『パレード』など。3月22日に公開される出演作『四月になれば彼女は』のロケ地で撮影した写真集『WANDERLUST』が発売中。

撮影/若木信吾

ヘアメイク/足立真利子 スタイリング/Takanohvskaya
衣装協力/Skirf Long Sleeve Jersey Top¥16,500、Cropped Sleeveless Strap Top¥24,200(VERSO/EDIT.FOR LULU BAYCREW'S CUSTOMER SUPPORT0120-301-457)、Denim Pants¥14,960(古着屋JAM原宿店03-6427-3961)、Necklace¥99,000(Sapir Bachar/Filg Showroom03-5357-8771)、その他スタイリスト私物