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 少し前になりますが、テレビ東京の『昼めし旅~あなたのご飯見せてください~』に出演させていただきました。この番組は、旅をしながら地元の方の“ご飯”を調査するというもので、僕は今回、群馬県の四万温泉におじゃましたんですね。番組では自分から地元の方に声をかけないといけないんですけど、実際には何件も断られています。なんせ完全にアポ無しですから。放送ではほとんどカットされていますけど、空振りも多い。「あそこのおばあちゃんなら絶対に対応してくれるから」と聞いてご自宅にお伺いし、インターホンを鳴らしても出てこない。すると、刑事ドラマのように隣の家から人が出てきて「おばあちゃん、今日は留守ですよ」みたいなこともありました。
 ただその土地を巡るだけじゃなくて、ご飯を見せてもらわないといけないというのは、やはりハードルが高い。でも、当たり前なんですよ。自分に置き換えてみても、いきなりやって来たタレントに「ご飯見せてください」と言われて、すぐに「はい」と言えるのか。難しいですよね。

 僕はこうした旅番組では、徹底的に相手本位になるようにしています。「家の中を映されるのだって、昼ご飯を撮られるのだって、普通は嫌ですよね。わかります。でも、そこをなんとかお願いできませんか。ダメならダメでいいですから」とお願いする。向こうの立場になって寄り添うことが大事なのかなと思います。
 それに、奇跡的にOKをいただいたときの立ち振る舞いも大切。受け入れてくれた方たちにはできるだけ楽しい時間を過ごしてもらいたいじゃないですか。嫌々招き入れたとならないようにしないといけない。そういう雰囲気は絶対に画面に映りますし。例えば、進んで何か手伝うとか、自分のできることを探すんです。最終的に「原田龍二に来てもらってよかった」と思ってもらうことが僕の目標ですから。
 旅先で人と深く交流するのは大変ですけど、でも大変さを楽しみにしている自分もいます。“旅力”を試されるというか。だから、旅番組はできるだけお引き受けするようにしています。

 旅番組もそうですけど、やはりいろいろな能力を試されるのが芸能の世界だと思っていて。特に舞台は役者としての力を試されますよね。
 いま御園座の三月特別公演で里見浩太朗さん主演の舞台『水戸黄門』に参加させていただいていますけど、実は初めての舞台も里見さんが座長の公演だったんです。
 2003年にテレビの『水戸黄門』で佐々木助三郎を演じさせていただき、その翌年でした。里見さんが座長の新選組がテーマの舞台に、僕も出していただいて。それが初舞台。もう20年も前になりますか。

 そもそも僕が『水戸黄門』に参加したいと思ったのも、里見さんから勉強したいという動機が大きかったんです。実は今日も家で里見さんが主演の『松平右近事件帳』という時代劇の再放送を観ていたんですね。やはり里見さんの佇まいには圧倒されてしまいました。時代劇の何が難しいかって、そこに立っているだけで、当時の人に見えなきゃいけないことなんです。着流しで刀を差していれば侍に見えるかというと、そういうものでもない。

 佇まいにそういうものがにじみ出ないといけないし、それは経験を重ねたからこそ出てくるものでもあると思うんです。里見さんの劇中での佇まいは「ローマは一日にして成らず」というか。僕もそういった佇まいがにじみ出るように精進しないといけないなと、強く思いました。
 里見さんとは当時から家族ぐるみのお付き合いをさせていただいていて、息子はもう成人していますけど、小さい頃から里見さんにかわいがってもらっていました。息子も娘も、よく抱っこしてもらったことを覚えています。

 里見さんとお会いするときにあまり演技の話はしませんが、自然とそういう流れになるときもあります。片岡千恵蔵さんや市川右太衛門さんなど、時代劇の大スターの話がふと出たりする。僕は直接お会いしたことのない方々ですけど、自分たちが時代劇をやっている前には、そういう時代があって、先人たちが築き上げてきたものを里見さんの話から知ることができる。それはとても大きな僕の財産になっています。

原田龍二

原田龍二 はらだりゅうじ 俳優。1970年生まれ、東京都出身。俳優として活躍する一方で、バラエティなどにも出演。『バラいろダンディ(金曜日)』(TOKYO MX)や『カラオケ大賞』(チバテレ)ではMCを担当。YouTubeチャンネル「ニンゲンTV」主宰。

 振り返ると20年ほど前に『水戸黄門』の撮影のために、家族で撮影所のある京都に移り住んだのがよかったのだと思います。京都には32歳から7年ほど住んだんですけど、もし僕が単身赴任で行っていたら、里見さんとの家族ぐるみのお付き合いはなかったでしょうし、いまのような関係もなかったかもしれません。これほど里見さんと親交を深めることができたのは、やはり家族で京都に住んでいたからというのが大きく影響しています。そういった意味では、最良の選択をした当時の僕を褒めたいと思います(笑)。

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