世界で初めて、小惑星のサンプルを地球に持ち帰る“サンプルリターン”に成功した無人探査機・はやぶさ。7年間、約60億kmという途方もない距離の航行を可能にしたのは、宇宙工学者の國中均さんが生み出したマイクロ波型イオンエンジンだった。
「イオンエンジンの研究を始めた1980年代後半頃、日本はアメリカやロシア、ヨーロッパに断然遅れをとっていました。企業活動であれば、他社の進んだ技術をコピーしてリスクを減らした開発を行うのがセオリーかもしれませんが、研究開発においてはオリジナリティが重要になります。そこで、それまで存在していなかったマイクロ波型イオンエンジンの研究を始めました。ただ、初めてのことなので、ノウハウはないし、参考にするものもないし、誰かに教えてもらえるということもできない。本当にゼロからの挑戦で、これはある意味、怖いことなんですよ」