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 昨年、話題になったドラマ『花咲舞が黙ってない』の続編が7月からスタート。主人公はメガバンクの銀行員。“正義のために立ち上がり、言いたいことをズバズバ言うあきらめないヒロイン”花咲舞を演じる杏さん。実生活でも、そのままなのだろうか。
「言わなかったことを後で後悔しないように、という気持ちはいつも持っていますね。海外の仕事では自分の意見を求められることも多く、イエスかノーの主張を常にしないといけないので、それが習慣になったというか。撮影現場でも『これでいい』じゃなくて『これがいい』と言うようにしています」
 丁寧に言葉を選びながら、こちらの目をまっすぐ見て話す。そのスタイルの良さも含め、ドラマの中ではひときわ目を引く存在感を放つ。
「銀行員の仕事内容は幅広いので、役作りはしようがないんです。重要
な書類を外に持ち出すことが、どれだけダメなのかも最初はよくわからなくて。細かい部分は現場のスタッフさんに聞きながら勉強しています。でも、私は算数が苦手なので、現実では銀行員になれませんけど(笑)」
 趣味は読書で、常に本を持ち歩いているという。とくに歴史物が好きで、’09年にユーキャン新語・流行語大賞で“歴女”がトップ10入りした際、杏さんはその受賞者となった。
「戦国時代から幕末にかけてが好きなのですが、一方で明治から昭和初期ぐらいまでの社会に生きた女性も素敵だと思います。女性がみんな家庭的、伝統的であることが当たり前とされる時代に、それらを身につけながらも革新的な行動を取るところとか。与謝野晶子や津田梅子など、強さとやわらかさの両方を持つ人に憧れます」
 幼稚園の卒園文集に「将来は着物を着て絵を描く人になる」と書いた杏さん。普段からちょっとした外出の際に着物を着ているという。
「卒園文集のことは全然覚えてなくて、後で見て驚きました(笑)。字もまともに書けない時期なので、先生の聞き書きなんでしょうけど」
 さらに、江戸時代の浮世絵や酒器を集めているともいう。
「着物とか器は、普段身につけない鮮やかな色が使えるのが好きなんです。酒器は、その時々のお酒やお料理に応じて気分で選んでいます。お酒ですか? 嗜む程度ですが、毎日何かしら飲んでいますね」
 また、「着物は学校で必修科目にしてほしいぐらい」と主張する杏さん。着物は季節によって柄や素材などを変えるので、そういうことを入口にして日本の伝統文化や美意識を学べるから、だという。
「どんなものでも知らないのに知っている、知っているのに知らない、
という距離感があるのですが、その距離があること自体あまり良くないはず。たとえば、着物を着たと言ったらちょっと驚かれるじゃないですか。そういう一つひとつが、なるべく特別じゃなくなればと思います」
 理想の女性像を尋ねると、「たおやかな女性」という答えが返ってきた。具体的には?と聞くと、そのたとえが面白い。
「高野豆腐みたいな人ですね。水分をいっぱい吸収して、いろんな味に染まることができる。日持ちもするし、変化を恐れない部分もある。芯があれば本質は変わらないという、そんな感じの女性です」
 今年は20代最後。来年は30歳という節目の歳になる。
「それはあまり意識していません。年齢に関係なく、いろんなものを受け止められて、どんなボールが来ても打ち返せるような、そんなフラットな状態が保てれば。結婚をして生活環境も変わったので、私の価値観も少しずつ変わるかなという思いはあります」

「花咲舞が黙ってない」 毎週水曜日 日本テレビ系にて夜10時より放送中。池井戸潤原作。東京第一銀行本部・臨店班の舞(杏)と相馬(上川隆也)がコンビを組み、全国の支店で起きる、さまざまなトラブルを解決するために奔走していた。そして今日もまた二人はある支店から呼ばれることになり…。
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 あん 1986年生まれ。東京都出身。10代より世界を股にかけてモデルとして活躍。’07年にテレビドラマで女優としてデビュー。その後、モデルの仕事を続けながら数多くのドラマや映画で主演を務める。’13年にはNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で主演も。『花咲舞が黙ってない』(日テレ系)は毎週水曜日、夜10時~より放送中。

ヘアメイク/平元敬一
スタイリング/河部菜津子(KiKi inc.)

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