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INORAN

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撮影/Jan Buus
取材・文/青木孝司

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 LUNA SEAのギタリストとしてはもちろん、ソロやバンドで様々な活動を繰り広げるINORANは、'12年にMuddy Apesを結成。「好き勝手にロックをやりたい」というこのバンドのきっかけは、FEEDERのベーシスト・TAKAとの出会いだった。

「僕はもともと、FEEDERのファンで、共通の知人を介してTAKAと知り合ったんですけど、人間的に惹かれ合って、『何か一緒にやりたいね』という話になったのが始まりですね。じゃあ、どんな音楽をやろうかってなった時に、ほかのバンドも好き勝手にやってないわけではないけど、もっと遊びっぽくセッションしようよっていうことで考えたのが“大人の泥遊び”みたいな音楽。それでバンド名にもMuddyって付けた。あと、外国人は猿が好きらしくて、でもMonkeyってバンド名に付けてるところが多いので(笑)、Apesにしました」

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 ボーカルは8ottoのMAESON、ギターは元FEEDERのサポートメンバーのディーン・タイディーと、日米英の国境を越えたプロジェクト。INORANが楽曲の骨となるサウンドを支え、ディーンがエフェクターを駆使した音の肉付けを担う。

「ライブではそういう役割分担になってますね。みんなこのバンドにとって骨と言えば、骨なんですけどね。骨だらけのバンド(笑)。MAESONは関西人ですけど、日本人離れしたボーカリストだし。歌詞カードを見ないと日本語だか英語だか、何を歌っているか分からない時もありますけど(笑)。FEEDERが活動しているイギリスは、日本やアメリカより最初に新しい音が生まれる音楽に先進的な土地だし、Muddy Apesは僕にとって音楽に対する外国人の感覚を教えてくれたり、視野を広くしてくれたりするバンドですね」

 LUNA SEAというホームを持ちつつ、そこだけには留まらない多様な活動に挑むINORANは、まさに様々な道に足を踏み入れることを良しとする思考を体現した存在と言える。

「自分にとってセーフティなゾーンから飛び出すことは大事。ブレることは決して悪くないと思います。ブレてみないと“ブレる、ブレない”がどういうことなのかも分からないし。音楽活動27年、ソロ活動を始めて20年。いろんなバンドやプロジェクトを経験することで、これが自分にとってブレない軸なんだなということが見えてきましたね。僕にとっての軸は“音楽が好き”ということなので、いろんな世界に飛び込みたいし、挑戦したいし、楽しみたい。大事なのは自分を信用するということですよ。それがあれば、たとえブレてるように見えたとしても、軸としての自分らしさは残る。常にブレてちゃダメですけどね(笑)」

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 リリースされたばかりのライブDVD『Muddy Apes Japan Tour 2016“Go Apes Go!!!”』をはじめ、今年は7作品に携わってきた。2ヵ月に1作以上のハイペースだが、今後も活動のフィールドを広げたいという願望はあるのだろうか。

「1日は24時間、体は一つという物理的な部分を超えないと(笑)。やろうかどうしようかと迷っているよりも、やってみたほうがいいですよ。まだ見つけてない自分、見たことのない景色はたくさんあるはずですからね。もちろん思い通りに行かないこともあるけど、その経験を生かすも殺すも自分次第。どんな経験も後で必ず自分に返ってくると信じています。今回、Muddy Apesにとって初の映像作品をリリースできることは、本当にうれしいです。日本にはなかなかない、ハンパない音を出せてると思うので、音楽好きにはぜひ観てほしいです」

ライブDVD『Muddy Apes Japan Tour 2016“Go Apes Go!!!”』
発売中 ポニーキャニオン 価格:6,000円+税
LUNA SEAのギタリストINORAN、UKの世界的バンド"FEEDER"のTAKA、FEEDERのサポートギタリスト ディーン・タイディー、大阪のロックバンド8ottoのヴォーカリストのMAESONによる日英米共同ビックプロジェクト、Muddy Apes。3rdアルバム「Faraway So Close」を引っ提げ、全国5ヵ所で公演を行った、Japan Tour 2016“Go Apes Go !!!”の模様がDVD化。

(C)2016 PONY CANYON

INORAN いのらん 1970年生まれ。神奈川県出身。1992年にLUNA SEAのギタリストとしてメジャーデビュー。LUNA SEAとして活躍する一方で、ソロや、Muddy Apesとしても活動。

撮影/Jan Buus 取材・文/青木孝司