昨年の12月、40歳になった今野は「四十にして惑わず」という孔子が唱えた“不惑”を迎えた。この人生の節目に何を思うのだろうか。
「不惑という言葉をこの取材で初めて知ったぐらいですから(笑)。全然興味がないですね。今、ジムに通っているんですけど、そこでおばさんから『私、もう古稀だよ』って言われて。この人は、何を言っているんだろうって思いました。“こき”って言ったら電話の“子機”ぐらいしか聞かないですから(笑)。年齢の節目は考えたことがないです。もし、意識するとしたら、芝居で何かの役を演じるときですかね。2017年に『僕たちがやりました』という連ドラに出演したんですけど、そのときのパイセン役が20歳ぐらいの設定だったんです。40近い自分が、ちゃんと20歳の若者に見えているのかどうか気を遣いました。でも、私生活で年齢を意識するようなことは昔から全くないですね」
最近は40歳を迎えた人による"二度目の成人式"もプチブーム。
「お酒やたばこは20歳からですけど、選挙権は18歳から。果たして20歳=成人が成立するのかどうか分からなくなってきましたよね。僕は去年の12月で40歳になりましたけど、誕生日が12月というのも厄介なんですよ。年が明けて2019年になり、そこから41歳の年が始まっていますから。2018年も1月から“今年は40歳の年”ということで生きていたので、年齢の感覚がわからなくなってくる(笑)。そういえば成人式で思い出したんですけど、僕らのときはスープレックスというお笑いコンビが来たんです、余興で。ご存知の方も多いと思いますが、コンビの一人は劇団ひとりさん。その頃は、いつかこの人と会うかも、なんていう感覚は全然ないですから、あまり良くない態度で観ていました(笑)」
個性的なキャラクターで、映画やドラマ、そして舞台に引っ張りダコだが、20歳の頃は、どんな青年だったのか気になるところ。
「20歳といったら、お笑いの養成所に入って1年目の頃。バリクソ尖っていた時期ですね(笑)。お笑いでうまくいくつもりはなかったんです。落語家さんのイメージが強かったので、世に出るまでに15年以上それどころか舞台に上がるまで、まず5年はかかるだろうと思っていました。でも、びっくりするぐらいトントン拍子で、バイトをしなくてもお笑いで食べて行けましたから。だから、取材とかで困るんですよ。下積み時代の思い出を聞かれても何もない(笑)。昔は、モロ師岡さんみたいになりたくて、今は『下町ロケット』で共演した中本賢さんのような大人にも憧れます。モロさんも中本さんも、ご自身が望まれたかはわからないですけど、ああいうポジションはいいなって思います」
“先輩”から新成人にメッセージを伝えるとすれば?
「実は、ちょっと前までは若者が嫌いだったんですよ。何か変なヤツがいると『ゆとりだな』なんて言って。ゆとり教育のせいではなくて、ただ単純に、その若者が嫌いなだけだったのかもしれない(笑)。でも、最近の若い子は何か良いんですよ。さとり世代は結構好きです(笑)。サッカーの日本代表にも、その世代の選手がいっぱいいるんですよ。自分が40歳になって思うのは大人も若者も同じだということ。経験が増えたり、視野が広がったりするだけで性格は変わらない。若い頃は自分の思っていることが幼すぎるから大人の会話に入らないようにしていたんですけど、そんな心配は必要ない。大人は崇高なものだと思わなくても大丈夫。実はたいした話はしていないから(笑)。伝わりにくいと思うけど、自分が40歳ぐらいになったら分かるかもしれません」
今野浩喜 こんのひろき お笑い芸人、俳優。1978年生まれ、埼玉県出身。2015年にお笑いコンビ・キングオブコメディを解散。以降は主に俳優として活躍。昨年2018年はドラマ『ブラックペアン』『下町ロケット』(共にTBS系)『極道めし』(テレビ東京系)や映画『不能犯』などに出演。