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 “北海道の星”だった青年は日本中のお茶の間を席巻し、北海道に帰ってきた。待望の『探偵はBARにいる3』で、4年ぶりにすすきのを根城とする探偵に扮する。
「今回は作品をよりおもしろいものにするために、脚本を初期のころから見せていただき、古沢さんやプロデューサーと話し合いをさせてもらいました。やっぱり地元で撮るということもあり、勝手に背負ってるものがあるような気がしてしまうんですねえ。4年越しになりましたけど、これなら待っていてくれた皆さまにも大丈夫だな、と」
 探偵が大変な目に遭うシーンも健在。今回の撮影は極寒の海の上。
「いやあ、過酷でしたよ。でも映像で見ると、あれ? 僕のつらさがそれほど伝わってない! これは体感型4DXシステムで、お客さんにも液体窒素でも出して冷気を体験させてやりたいな!って(笑)」
 シリーズ開始から6年。探偵は、より人情味を増した感がある。
「今回はヒロインの北川景子さんに、探偵がかつて酔っぱらって言った“ある言葉”が実は響いていた――という展開があるんです。見てくださった方からも『あれは響いた』という声をたくさんいただきまして、探偵も少し大人になったのかな。僕自身も30代から40半ばになったし、6歳の娘がいますからね。歳とともに自分のことだけ考えるんじゃなく、世間に対して何かやれることがあればやりたいな、と」
 吉田照幸監督とは初タッグ。いままでにはない“スロー”なアクションシーンが新鮮だった。
「あれ、実は本当にゆっくり動いてるんです。パンチが当たった瞬間の顔のブレとかがキモなので『本当に当ててください』って言われて。ゆっくりだから痛くないかって? ……けっこう痛いんですよ(笑)」
 松田龍平とのコンビも4年ぶりだ。
「松田くんは相変わらずひょうひょうとしてて、おもしろくてね。今回は、夜に少し時間があったので、松田くんとごはんを食べに行けたんです。二人ですすきの歩いていると、もう完全に探偵と高田そのまんま。『あ~、いまカメラ回してくれればいいのにね』って言ってました」
 猥雑さと人情味がごっちゃになったような北海道・札幌の歓楽街「すすきの」。そこにあるレトロなバーの黒電話を連絡先とし、スマホも持たない探偵。その世界にはどこか「昭和」を感じる。
「この映画は、僕らが見てきた昭和の“ハードボイルド”をイメージしていると思いますね。自分的には探偵は『ルパン三世』の雰囲気が近いかな。子どもの頃からドンピシャ見てましたから。松田くんの愛車・初代ビュートもそんなイメージ。あの“仲間感”は共通しているかな」
 大泉は昭和48年生まれ。平成元年には、まだ中学生だった。それでも昭和にはノスタルジーを感じる、と笑う。
「僕のような昭和後半世代でも、やっぱり『いい時代だったなあ』って思いますよ。いろんなものが自由だったなあって。やっぱいまの僕らはどこか息苦しさを感じているんじゃないのかな」
 特にいまエンターテイメントの世界は、さまざまな規制や配慮に気を配らなければいけない。本当にやりにくくなったと実感している。
「勝手にいろんなことを告げ口しあって、自分たちが見るものを、自分たちでつまんなくしてる気がしますねえ。映画の世界にはまだ少し自由はあるけど、バラエティはものすごい規制の中でやらなきゃいけない。僕らがつくるものは、作り物であって現実ではないんですから。あの頃の自由な気持ちを、忘れちゃいけないんじゃないかって思いますね」

『探偵はBARにいる3』
12月1日(金)全国公開
ミステリー作家・東直己の同名小説を映画化した人気シリーズの第3弾。札幌・すすきのを拠点にする探偵(大泉洋)と助手の高田(松田龍平)の活躍が描かれる。高田の後輩から、失踪した恋人の麗子(前田敦子)を探してほしいとの依頼を受け、さっそく調査に乗り出した探偵は、麗子のアルバイト先のモデル事務所で、オーナーのマリ(北川景子)と出会う。かすかな既視感を覚え、ある日の出来事を思い出すが…。
(配給:東映)
http://www.tantei-bar.com/
(C) 2017『探偵はBARにいる3』製作委員会

大泉 洋 おおいずみよう 1973年4月3日生まれ、北海道出身。俳優、タレント、声優、コメディアン、作家、歌手。CREATIVE OFFICE CUE所属。演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。94年に北海学園大学経済学部入学。在学中に鈴井貴之が主宰する劇団の劇団員に認められ、95年10月に北海道テレビの深夜番組に出演。96年10月に「水曜どうでしょう」に出演。その後、全国放送のドラマに出演するなど、幅広く活躍。また、三島有紀子監督作品の『しあわせのパン』、『ぶどうのなみだ』では、ともに主演を務める。

ヘアメイク/西岡達也(ラインヴァント) スタイリング/九(Yolken)

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