1970年代から80年代にかけて大ブームを巻き起こした女子プロレスの世界を描くNetflixシリーズ「極悪女王」の配信がついにスタート。才能あふれる人気芸人は、稀代の最恐ヒールレスラー・ダンプ松本となり、熱狂の渦に身を投じた。
「私は90年代生まれなので、当時の雰囲気はわからないんですけど、劇中のポスターやチラシなどが細かいところまで再現されていて、その時代の中で演じさせてもらいました。試合も本物に近い状態で撮っていただいて。うまい言い方が見つからないんですけど、特に最後の試合は演じている私たちも役になりきるというより、魂だけタイムスリップして当時の人々の中に入っていたような、これまでに体験したことのない不思議な感覚でした。とにかく一体感がすごかったですし、会場に来てくれたダンプさんも“あの時のままだ”とおっしゃってくださいました」
ダンプ松本と死闘を繰り広げた長与千種に扮する唐田えりかとは、こんなエピソードも。
「えりかとはめちゃくちゃ仲良かったんですけど、2人が決別するシーンから話さないようにしようと示し合わせて、しばらくは挨拶もしませんでした。でも、試合の前日にリハーサルをしたら、あまり噛み合わなかったんです。その日の夜にえりかに誘われて久々に一緒にご飯を食べたらめっちゃ楽しくて、私たちほんまに憎しみ合っていたわけじゃなかったんやなって(笑)。そこでお互いに“ここはあの感じでいくわ”みたいに話し合ったおかげで、最高の状態でクライマックスに臨めました」
プロレスラーを演じる上で、避けては通れないのが体づくりだった。
「当時のダンプさんの印象に近づけなければいけないので、体重を増やしながらダンプさんに見えるように、トレーニングをして、太もも、肩、背中と筋肉をつけていきました。すべてのパーツが筋肉痛になったんですけど、全然嫌じゃないんですよね。もちろんトレーニング中はきついし、しんどいんですけど、やったらやるだけ結果が出るので、嫌にならないんです。筋トレ最高みたいな(笑)。筋肉痛も大好きです!」
体づくりのための準備期間を含めると、クランクアップまでには3年以上の年月を要している。
「私、今33歳なので、人生の11分の1くらい「極悪女王」に携わっているんです。キャストのみんなと一緒にバスで船橋の道場まで行ってプロレスの練習をしたり、できなかった技ができるようになって泣いたりもしました。「極悪女王」をやっていなければ、私の人生はどうなっていたんだろうと思えるほど、かけがえのない作品ですし、自分の殻を破れた作品だと思います。今まで出せなかった感情が出せました。私の全部を見てもらえる気分です」
本作の指揮を執った白石和彌監督には、こんな表現で感謝を伝える。
「大っっ好き! 大大大っっ好きです。私、しばらくは白石監督と呼んでいたんですけど、撮影中のあるタイミングで和彌監督に変えてみたら、普通に受け入れてくれて(笑)。みんな和彌監督が大好きで、いつも取り合いになるんです。例えば和彌監督が“今のいいね”って誰かを褒めたら、みんなが“え~、私は~?”“私はどうですか?”みたいな(笑)。まさに部活の顧問の先生みたいで。本当に私たちを心から信じてくれたし、演技でも私たちの心が動くほうを優先してくれました」
「私が頭を打った時も、週刊誌に和彌監督が無理強いをしたみたいに書かれていたんですけど、まったくそんなことはなくて、あれは私が普通に受け身をうまくとれなかっただけなんです。“過酷な現場”みたいに書かれるのが本当に悔しかった。和彌監督は常に気を配ってくれましたし、すごく安全に配慮された現場だったというのは強調しておきたいです。和彌監督をはじめ、茂木(克仁)監督やスタッフのみなさんがいたから、私たちは最後まで走りきれました」
女優として花開いた本作を経て、次に目指すのは世界の大舞台。今年中には拠点をアメリカに移す予定だ。
「ゆりやんレトリィバァから、Yuriyan Retrieverになりたいんです。芸人だけじゃなくて、やりたいことは全部やるエンターテイナーを目指します。ハリウッドスターになりたいし、音楽ライブもやりたい。アカデミー賞も取りたいし、グラミー賞も取りたい。宇宙にだって行きたい! とにかく自分が楽しいと思える人生を送りたい。この地点まで行ったら終わりじゃなくて、どんどんやりたいことに挑戦して、次から次へと夢を叶えていきたいです」
Netflixシリーズ「極悪女王」
世界独占配信中
日本中を席巻した1970年代から80年代の女子プロレスブームと共に、ゆりやんレトリィバァ演じる松本香が“最恐ヒール”ダンプ松本になるまでの知られざる物語を全5話で描く衝撃の半自伝ドラマ。企画・プロデュース・脚本:鈴木おさむ、総監督・監督(1~3話):白石和彌、監督(4~5話):茂木克仁
https://www.netflix.com/title/81351263
ゆりやんレトリィバァ 芸人。1990年生まれ、奈良県出身。NSC(吉本総合芸能学院)大阪校に35期生として入学して、首席で卒業。2017年に第47回「NHK上方漫才コンテスト」と第1回「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝。2019年にはオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出場して話題を呼ぶ。2021年には「R-1グランプリ2021」で優勝。お笑いだけではなく、ラッパーや役者、アイドルや声優など、幅広く活躍。主演作のNetflixシリーズ『極悪女王』が世界独占配信中。
ヘアメイク/星野加奈子 スタイリング/伊藤ミカ
衣装協力/ジャケット¥100,100、パンツ¥100,100(共にアレキサンダーワン)、ピアス¥176,000、ネックレス¥374,000、ゴールドリング¥286,000(以上全てアンダー ザ ローズ)、ブーツ¥33,000(ALM.)、その他スタイリスト私物