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 『仮面ライダーBLACK SUN』の配信がついにスタート。白石和彌監督の手掛ける本作で、仮面ライダーBLACK SUN/南光太郎を演じるのは、俳優・西島秀俊。2人には意外な接点があるそうで…。
白石 西島さんの出演していた2004年の映画『銀のエンゼル』に、制作部のロケ担当として参加していたんです。あんまり俳優部とは関わりがなかったので、当然覚えてないと思うんですけど。
西島 そうですね、白石監督がそこにいらっしゃったとは。ただ、北海道が舞台の映画だったんですけど、撮影時に雪が降ってしまい、ダイヤモンドダストが舞う中、みんなで雪かきをしたのは覚えています。あの現場でご一緒していたんですね。
白石 寒かったですよね。当時から西島さんの印象はまったく変わらないんですよ。すごく気さくで、みんなに優しく接してくれる方で。
西島 僕は白石監督について周りの人から、作品に携わる全員のことをすごく考えている監督だと聞いていたんです。だからこそ、キャストもスタッフも監督に全てを委ねて、自分の能力を最大限発揮しようという空気になると。それは本当にその通りでした。
西島 白石監督の作品では、俳優がいつもと違う演技をするイメージがすごくあって、みなさん生き生きとしているんですよね。見たことのない面を出しているというか。そういった意味でもオファーをいただいたときから、すごく楽しみでした。
白石 西島さんの現場での姿勢こそ素晴らしくて、全員が学ぶべきだなと。日本アカデミー賞のスピーチで「日本映画のために身を捧げる」とおっしゃっていたじゃないですか。どの作品を拝見しても、その気持ちに嘘偽りがないというか、まさにそういうつもりだというのは伝わってきて、今回ご一緒してもそれは強く感じました。本当に映画が好きな方なので、現場では心強かったです。
西島 ありがとうございます。
白石 それに、『シン・ウルトラマン』の公開前のインタビューで、西島さんがウルトラマンに変身する斎藤工くんがうらやましいみたいなことをおっしゃっていたんですね。実はこのとき発表前だったんですけど、すでに西島さんが仮面ライダーに変身することは決定していたので、ああ、布石を打ってくれているんだなって(笑)。
西島 いやいや(笑)。ウルトラマンにも変身したいですし、できることなら戦隊にだってなりたいですよ(笑)。
白石 こういうウィットに富んだところも素敵で、みんなが大好きになるのもわかるな、と。実際に仮面ライダーBLACK SUNに変身してみていかがでしたか?
西島 変身はとにかく感情を込めると決めていたので、ここ一番の緊張感を持って臨みました。ただ、撮影部や照明部、特殊効果やCGのチームもいるので、全てがうまくハマらないと変身のシーンってNGになってしまいますよね。だからこそ、全員の集中力が増し、気持ちがグッと入る瞬間があって、それは今思い出してもすごく興奮します。
白石 脚本の上でも、変身のシーンはあえて怒りが爆発する瞬間にしているんですね。登場人物はさまざまな感情を抱えていて、その頂点をどこに置くかというのは毎回考えますけど、特に西島さんの光太郎と中村倫也くんの演じた秋月信彦の2人は、怒りが沸点に達したときにあることが起きるようにしていたので。
西島 この怒りという感情も、単純な怒りではないですよね。怒りの根底には、悲しみだったり愛情だったり、別の感情があったりする。だから、自分が怒るシーンを演じるときには必ずそういうものを探す作業をしていました。それに僕は、この作品を一度は戦うことを放棄した男が個人的な戦いのために再び立ち上がる物語だと思っていて、光太郎に関しては怒りには直結しない別の感情も秘められていると感じました。
白石 確かに、おっしゃる通りだと思います。『仮面ライダーBLACK SUN』では、社会問題を描いていますけど、そこには登場人物一人ひとりの怒りがあって、それは同じ怒りではないですから。
西島 白石監督はすごくフェアな方で、この物語が寄り添っているであろう人たちにも、「これでいいのか?」という部分をちゃんと突きつけている。本当の正義ってなんだろうと考えさせられます。社会の“今”が映し出されているので、ぜひ観てほしいですね。
『仮面ライダーBLACK SUN』
プライム・ビデオにて独占配信中
2022年、国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀。混沌の時代を舞台に、差別の撤廃を訴える若き人権活動家・和泉葵(平澤宏々路)の視点で、次期創世王の候補、仮面ライダーBLACK SUN/南光太郎(西島秀俊)と仮面ライダーSHADOWMOON/秋月信彦(中村倫也)の戦いを描く。
https://www.kamen-rider-official.com/blacksun/
(C)石森プロ・東映(C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT
西島秀俊 にしじまひでとし 俳優。1971年生まれ、東京都出身。1992年にデビュー。近年の主な出演作にドラマ『MOZU』シリーズ、『きのう何食べた?』シリーズ、映画『ドライブ・マイ・カー』など。『仮面ライダーBLACK SUN』では、仮面ライダーBLACK SUN/南光太郎を演じる。

白石和彌 しらいしかずや 映画監督。1974年生まれ、北海道出身。2010年に長編映画監督デビュー。近年の監督作品に『凪待ち』『ひとよ』『孤狼の血LEVEL2』『死刑にいたる病』など。『仮面ライダーBLACK SUN』がプライム・ビデオで配信中。
ヘアメイク/亀田 雅 スタイリング/カワサキ タカフミ
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