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小宮浩信

小宮浩信

撮影/若木信吾
取材・文/青木孝司

小宮浩信

小宮浩信

「自分ではあんぽんたんっていう自覚はないですけど、昔はよくバイトを1日でクビになったりしてましたね(笑)。今でもフリップをうまく出せなかったり、やたら台本が棒読みだったりしますし」

 そう笑う小宮浩信は、滑舌の悪さなどを共演者たちにツッコまれる、愛されキャラとして人気を集めている。

「滑舌や声質のこともあって、三四郎の『声がダサいほう』なんて言われます。オチまで言ってないうちに笑われちゃうのは、オイシイと思う一方で、悔しいですけどね(笑)。でも、そんな風に先輩や後輩からも分け隔てなく接してもらえるのはありがたいです。小学生からも、『小宮!』って呼び捨てですからね。僕も子どもの頃は志村けんさんのことを『志村!』なんて言ってましたから(笑)。それと一緒で、親しまれてるっていうことなのかなと思ってますけど」

小宮浩信

 愛情表現でもあり、自虐ネタでもある“あんぽんたん”というキャラを与えられたことで、得したことはあるだろうか。

「初めからハードルが低いというか、期待されてない分、あまり怒られないっていうのはあります(笑)。むしろ相方の相田(周二)のほうが『小宮を何とかしろよ』なんて怒られてたりして。ネタを書いてるのは僕のほうなんですけどね。自分で書いておきながら、オチまで行かないうちに滑舌とかで笑われちゃうのは、深刻な課題ではありますけど。でも、バイトのときは仕事ができないと怒られてましたが、この世界では最終的に笑いにつながりさえすればOKなわけですからね。あとは先輩にツッコみを入れるとき、こっちがあまりパーフェクトな人間だと角が立つじゃないですか。僕みたいなちょっとダメっぽい人間のほうが『まぁ、小宮だからしょうがないか』なんて許されちゃうんです」

 そんな彼にとって、“あんぽんたん道”の先人とも言える芸人は?

「やっぱり、出川哲朗さんが道を切り開いてくださったことは大きいですね。一見イジられキャラみたいに思われてる人も、実はしっかり考えて演じてる一流の芸人さんなんだっていうことを示してくれた先駆者だと思います。出川さんと比べたら僕なんかただのゆとりですよ(笑)。もう一人、あんぽんたんなんて言ったら失礼な大先輩ですけど、笑福亭鶴瓶さん。のらりくらりとやってるように見えるから共演してる後輩芸人やアイドルにもイジられますけど、最終的には自分がきっちり落とすっていう究極の形ですね。たとえば松本人志さんみたいにパーフェクトで失敗をしない方もいらっしゃいますけど、鶴瓶さんは仮に失敗のように見えても、最後には自分が締める。芸人仲間の中にも、鶴瓶さんみたいになりたいと言ってる人は多いですよ」

小宮浩信

 逆に後輩芸人の中で、自分のポジションを脅かしそうな存在は?

「ANZEN漫才のみやぞんはフリートークが成立しないという意味では、あんぽんたんかも知れないですね(笑)。もちろんギターとか、ほかの人にはない秀でたものがあるからいいんですけど。フリートークにおいてはヌケてるところがあったほうが、予定調和にならなくて面白いっていうのもありますからね。お笑いのセオリーを完全に無視してくるので、素で笑えちゃうんですよ。僕としてはそんなハプニングに対しても、作り込まれた笑いに関しても、どちらにも長けてる人でありたいなと思ってます。それと僕の場合、飲み屋さんとかで一般の方にイジられることも多いんですよ。これが大して面白くなくて。イジるほうにもスキルが必要なんだよ!と僕は思ってるのに、見て見ぬ振りをして何のフォローもしない相方が一番あんぽんたんだと思いますね(笑)」

小宮浩信 こみやひろのぶ お笑い芸人。1983年生まれ、東京都出身。2005年に中学校の同級生だった相田周二とお笑いコンビ・三四郎を結成。現在、『イッテンモノ』(テレビ朝日系列)、『青春高校3年C組』(テレビ東京)などにレギュラー出演中。

撮影/若木信吾 取材・文/青木孝司

ヘアメイク/MAIMI スタイリング/新地真弥(Tatanca)