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寺島進

寺島進

寺島進

撮影/伊東隆輔
取材・文/大道絵里子

家族・奥様を大事にするアニキに

愛の住処である家庭の悩みを聞いてみた。

Q1. 優しい夫なのですが、誰かとLINEをしているようです。携帯をチェックしようとしても鍵がかかっていて、ますます怪しい…どうしたら夫を信じられますか?

この人、信じたいって言いながら携帯見てるところに問題があるよな。ハナから浮気してると勘ぐってるわけでしょ?女の人は携帯見る人多いけど、あれって、お化け屋敷みたいなもん? お化けが出たら怖いけど、覗いてみたいっていう…。でもさ、覗いてみて何にもなかったら本当に安心すんのかね。それも単純じゃない? だってたとえ怪しいメールがあったとしても、決定的な現場を押さえたわけじゃないんだから、浮気してるかどうかなんて分からねぇじゃん。俺も昔浮気してたわけじゃないのに、女の人に携帯を見られて別れたことあるもん。俺が怒って別れたわけじゃなくて、相手のプライドの問題。最初は受信メールを見られたの。そこでもモメたけど、まぁ耐えられたみたい。でも次に俺が送ったメールを見て、彼女がもう俺とはダメだ…ってなっちゃった。人間誰しも好きな相手のオンリーワンでいたいのは分かるけど、俺だってそりゃあ飲み屋の付き合いでホステスから営業メールが届くこともあるし、付き合いで返すこともある。
それだけのことだったんだけど、「浮気してるかも」って勘ぐって読むから、ちょっとした内容でも重大に感じちゃうし、一度、具体的なものを見たらそれが頭に残っちゃうから。だから本当に信頼したいんだったら、携帯を見ても何もいいことないって。
まぁ、削除しない俺も俺なんだけど…。前から友達にも言われてたの。「ホステスからメールが来たら、絶対に削除しなよ。女の人っていうのは携帯見る動物だから!」って。「んなもん、面倒くさい、見たら見たまでだろ!」とか言ってたんだけど、やっぱりそれは必要だったと気付いた。
証拠隠滅じゃなくてパートナーに対する気遣い、エチケットだよね。だから、この人のダンナも問題あるよな。浮気している気配を匂わすわけでしょ? 女の人って何か知らないけど勘が鋭いじゃない。あの勘に対抗するためには男も変な気配を出さねぇようにしないと。とりあえずポーカーでもやって、ポーカーフェイスの練習した方がいいよ。俺なんか大部屋時代に事務所でエイトポーカーばっかりやって鍛えられたからすごいよ、ポーカーフェイス(笑)。しかし携帯がない時代はこんな悩みなんてなかったのに。誰もが携帯を持つようになって、どんどん退化してる、人間も信頼関係も…。なんか情けない話だね。

寺島進

Q2. どうしたら10年、20年と愛情を失わずに、同じ人と一緒にいられますか? 私には想像がつきません。寺島さんは奥さんをずっと変わらず愛していく自信がありますか?

自信?あるに決まってるじゃない!ないと困っちゃうよ。向こうも俺を世界一愛してると思うし。(取材チームの女性陣から「お~!!」という歓声が飛ぶ) お互いそういう存在になるにはって?う~ん、やっぱり常に話し合うことじゃないかな。女の人って話す動物だから、ちゃんと話を聞いてあげねぇとダメだよね。
どのくらい聞いてあげられるのかっていうのも男の器量だから。ま、そういう俺も新婚時代はそれが全然できてなかった。カミさんにああしろこうしろと言うけど、京都(撮影所)に行ったら俺から一切連絡しないし、飯を食い終わったら部屋に閉じこもって台本読んじゃうし…。
カミさんは年下だから黙って俺についてこい、でいいと思ってたんだけど、それがカミさんのストレスになって溜まったんだろうな、あるとき爆発して大喧嘩になったの。そもそも俺のカミさんになるくらいだから、すげえ気が強い女だから。最初の数年は、それはそれはぶつかった。本当に離婚しようかっていう勢いの喧嘩もした。実際、結婚して2、3年が一番離婚率高いんだって。
でも、その都度しっかり話合うようにしたら、自分の主張だけじゃなくて、お互いを尊重できるようになって…。
ちょうどそのころ三谷幸喜さんの『清須会議』って映画に出演したんだけど、小日向文世さん演じる丹羽長秀が「年上の女房は年下らしく、年下の女房は年上らしく扱え。それが円満の秘訣だ」ってセリフがあったの。それを聞いてからカミさんに頼るようにしたら益々うまくいくようになった。今なんて困ったときは全部カミさんに質問するもんね。そしたらすごい真摯に答えてくれるんだよ。そんなカミさんのよさも引き出されてきて。最近「何で俺たちこんなに仲いいんだろうね」って話をするんだけど「あのぶつかりあいの期間を我慢したからだよね、逃げないでよかった、我慢してよかったね」って結論になるの。そういう期間を経て信頼関係が生まれて愛情が育っていくんじゃないかな。そしたら一人の相手を愛する自信もついてくるんじゃない?

寺島進

まぁ女の人ってあまり不満を口に出さない代わりに一度爆発したら「何年前の話?」みたいなことを言いがちだから、瞬間的に吐き出すの大事だね。しかしあれってなんだろうね。うちも昔の話を持ち出して怒り出したり、かと思うと急に初デートの話で褒めたり。最初、浅草駅で待ち合わせたの。カミさんに「改札で待ってるから、一番前の車両に乗れよ」って言って。浅草って終点だから、一番前に乗ると一番早く会える。ただ早く会いたいってだけだったんだけど。カミさんから見たら、自分が乗った電車が浅草駅のホームに入ってきて「浅草~浅草~」ってゆっくり停車したドアの正面に、ばっちり俺が立ってたんだって。もう、その光景が堪らなかったって。「あのときの進さん、かっこいいの!」なんてさ。俺、掌で転がされてる? まぁそれくらいでいいんだよ。

寺島進

寺島進 てらじま・すすむ 東京都出身。俳優・松田優作が監督した「ア・ホーマンス」でデビュー後、北野武作品で活躍の場を広げる。映画のフィールドからテレビドラマにもその顔は知られるように。『五つ星ツーリスト(日テレ系)』にレギュラー出演しているほか、4月1日(水)には出演作品「エイプリルフールズ」が全国劇場で公開。

撮影/伊東隆輔 取材・文/大道絵里子