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YADOKARI

未来住まい方会議

アートディレクターのさわだいっせいとプランナーのウエスギセイタを中心とする「住」の視点から新たな豊かさを定義し発信する集団。ミニマルライフ、多拠点居住、スモールハウスを通じ、暮らし方の選択肢を提案。主な活動は、『未来住まい方会議』運営、スモールハウスのプロデュース、空き家・空き地の再利用支援ほか。
250万円のスモールハウス『INSPIRATION』販売開始。http://yadokari.net/

YADOKARI

未来住まい方会議

第22回「始めよう、未来の豊かな暮らし」

2017.3.20

ちょっと前まで、いいと言われる価値観は決まっていた。「いい学校」を出て「いい会社」に入り、安定した給料を稼ぐ。ボーナスが出たらブランド品を買って、車を買って、ローンを組んで家を買って、定年まで一つの会社に勤める。みんなおんなじ方向を向いて、競争をするように走り続けていた。それがあたりまえだったから、特に疑問を抱くこともなく。でも、僕たちが生きている今は、変わり始めている。

1973年、イギリスの経済学者、エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーは『Small Is Beautiful』という本を書いた。たくさんの物をつくって、どんどん消費することが幸せの指標となってしまった経済。それはおかしいんじゃないかと疑問を投げかけた本だ。経済成長のまっただ中にあった刊行当時、どれだけの人がこの本に賛同できただろう。今のほうがしっくりくるという人は多いだろう。

「四畳半フォーク」とか、ちょっと憧れる。狭い部屋に身を寄せ合う。小さな住まいだからこそ得られる、人のぬくもりが感じられる距離。それはもちろん疎ましいことでもある。家族みんなが個室を持つという住まい方を選ぶこともあるだろう。そうすればプライバシーは守られるけれど、その代わりになくしてしまうものもある。

かつて、たくさん物を持つのが豊かさの証だった。今は、物を持たないことで、自由を手に入れる贅沢があることにみんな気づき始めている。家を所有しなければ、いつでもどこへでも移り住める。旅をしながら生活したっていい。

幸せな家庭の証として、かつては誰もがマイホームを欲しがった。そうして家を手に入れたとしても、自分が死んだ後はどうするのだろう。子どもたちに引き継ぐ? それが子どもたちにとって重荷になってしまうこともある。それならむしろ家と土地を残すより、自分で家を建てられる方法を子どもたちに残したほうが本当は役に立つんじゃないだろうか。

DIYって日曜大工のことだと思っていた。でも、ただ家具をつくるっていうことじゃない。Do it yourself。机や本棚をつくるように、家だって自分でつくってしまっていい。プロのコックがつくる料理は美味しいけれど、自分にだって美味しいものはつくれる。それと同じように、プロの建築家みたいにはできないけれど、自分で家をつくってみたっていい。一人きりではできなくても、みんなの力を借りたら実現できるんじゃないか。そうやってみんなで力を合わせたら、住まいだけじゃなくて、コミュニティーもつくり出せる。セルフビルドはコミュニティービルドでもあるんだ。

誰かが決めた豊かさのものさしで自分の幸せを測る必要はない。何が豊かなのかは自分で探せばいい。人生で何を優先させるか? それはみんな違っていていい。一人ひとりが住まい方、つまりは生き方を選べる時代がやってきたんだ。

祭でにぎわう歴史を引き継いで、日本橋は小伝馬町の小さな神社の境内に、僕らは新しいコミュニティーの場をつくった。そしてこれからも、いろんな住まい方をしている人たちに会いに行くだろう。

住まい方は自分で選んでいい。それが風変わりな生き方であったとしても。それと決めたら、自分の旗を立てるんだ。それを目印に仲間が集まってくる。

さあ、未来の豊かな住まい方を始めよう。



Via: 未来住まい方会議 YADOKARI
http://yadokari.net/