FILT

 テレビでの発言、ブログやツイッターの書き込みなどがすぐに炎上する昨今。自分と違う意見に対して寛容さが失われているように思える。
「匿名という部分が大きいかもしれませんよね。自分の名前が出ちゃうとわかったら、みんなそんなことは言わないと思います。いまは言った者勝ち。誰かが傷つく姿が見たいんでしょうね。みんなで徹底的に叩くじゃないですか。そして、すぐに飽きて、次の標的を探す。タレントさんたちも自分の言動に気をつけていますよ。いまは、人を嫌な気持ちにさせることが簡単にできちゃう時代。優しい気持ちになれるものがないのかもしれませんね。常に不平不満を抱えているから、どうしても他人に対して攻撃的になってしまう。SNSは便利なものだからこそ、もうちょっと美しい使い方をすればいいのにな、と思いますね」
 コメンテーターとしてテレビに出演する機会が多い中、自身がコメントするときはどんなことに気をつけているのだろうか。
「正直なところ、誰が不倫しようが当事者以外は関係ないじゃないですか。でも、番組に呼ばれている以上、発言を求められたら『どっちでもいいんじゃないですか』とは言えない。だから、まずは自分の言葉に嘘がないということが前提。その上で、もうすぐ50歳になろうとしている人間がどんな風に考えているのか、同世代の人たちと感覚がズレないように心がけてコメントしています。言葉って、その人の普段の生き方がはっきりと出るもの。この人は意地悪そうだな、頭が良さそうだなって、何となくにじみ出てくるような気がするんです。それって、裸を見られるより恥ずかしいことかもしれません。発言すればするほど、私の日々の生き方が出てしまうので、注意しないといけないですね」
 意外と言ったら失礼だが、子どもの頃は無口なタイプだったとか。
「ずっと黙っていられましたね。親から『黙って本を読んでいなさい』って言われたら素直に従うタイプでした。私の両親は”批判能力”が異常に高いんです。食卓で誰かの悪口を言ったりする家族でした(笑)。特に父は、私の学校に来たかわいい転校生の女の子の写真を見て『鼻から口までの距離が長い』と表現したり、唇が分厚い子がいたら『ドテラの袖みたい』とか言ったり、例えが面白くて。でも、そういう会話は家の中でだけ。外では絶対に他人の悪口を言ったらダメだという教育を受けていました。父が開業医で母は専業主婦だったので、昔から両親と話をする機会が多かったこともあり、今でも気になるニュースがあると2人がどう考えているのか聞いてしまいますね」
 言葉は武器にもなり、ときとして凶器にもなる。相手が異性の場合、おしゃべりな男性と無口な男性、どちらが好みなのか気になるところ。
「う~ん、これは結構難しいですよね。無口な人だと何を考えているのか分からないから、それはそれで面倒くさい。例えば、一緒に旅をしたとしてもつまらないですよね。結婚していたときに夫婦でモルディブに行ったことがあるんですけど、会話がなかったんです。コテージの部屋は足元がガラス張りになっていたから、その下で泳いでいる魚を相手にずっとしゃべっていました(笑)。かといって、おしゃべりな人がいいかと言われると脳のレベルというか、知識や感性が共通していないと、どっちも苦しくなってしまうと思うんですよ。特にこれからは老後のことも考えないといけないですから、話が合うことが大切。できれば人を傷つけない“愛のある毒舌”が上手な人と巡り合いたいですね(笑)」
西川史子 にしかわあやこ 形成外科医。1971年生まれ、神奈川県出身。都内のクリニックで美容医療の診察に携わる傍ら、各メディアで活躍中。『サンデー・ジャポン』、『有吉ジャポン』(共にTBS系)、『ニュース女子』(MX/DHCシアター)などにレギュラー出演中。
ヘアメイク/井上祥平(nude.) スタイリング/吉田太郎(SECESSION) 衣装協力/AULA
特集 だまれ、ニッポン。
CONTENTS