FILT

 対人恐怖症の妊婦ーー。
4月1日に全国公開される映画『エイプリルフールズ』で、これまたすごい役を演じ切ったものである。
 脚本・古沢良太、監督・石川淳一という、大ヒットドラマシリーズ『リーガルハイ』のコンビに加え、里見浩太朗、富司純子、松坂桃李、ユースケ・サンタマリア、寺島進ら27名の豪華キャスト。彼らが織りなす“愛と感動と爆笑のエンタテインメント”だ。この作品で戸田は小さな嘘が巻き起こすドタバタ劇の中で大暴れする主人公「新田あゆみ」役に挑戦している。
「これまでの自分のキャリアを俯瞰で見た時、『次はエンタテインメント作品をやらなきゃ』という思いがあったんです。不器用ながら自分の気持ちを一生懸命伝えようとする“あゆみ”
のキャラクターはとても魅力的だし、もちろんやったことがない役柄。ぜひ、出演したいなと」
 あゆみの役作りについて聞いてみると「対人恐怖症」については、とくに調べることをしなかったという。
「あくまでも、自分が描いたイメージを掘り下げていきました。お芝居の細かいところは出演者同士で話し合って固めていったんです」
 現在、26歳。しかし、役者デビューは16歳と早い。若いとはいえ女優としての手ごたえをまさに感じている時期ではないだろうか。
「じつは、演技の癖ができてしまってるなと感じていたんです。それが2010年に『SPEC』のお話をいただいて、コメディという違う道筋が一本できた。さらに、今回の作品では役の肉付けを極力しないで演じるという新しいチャレンジをしてみました」
 情緒不安定な主人公の演技を自宅で練習していたら、愛犬が心配そうに近寄ってきたそうだ。
「それを見て、『あっ、これで正解なんだ』って(笑)」
 監督との打ち合わせの際、明らかに『SPEC』の役のイメージで話していると感じた戸田は、「絶対に変えてやる」と心に誓ったという。こう見えて彼女、反骨精神の塊なのだ。
「役について考えるのは好きなんです。演技について監督はほとんど何も言わないので、かなり自由にやらせてもらいました」
 作品のテーマとなっている「エイプリルフール」だが、本人は昨年の4月1日に何か気の利いたウソをついたのだろうか。
「あっ、つきましたよ。家の電話の子機にボイスチェンジャー機能があるんですが、地元の親友にかけて『声ヘンでしょ? 喉の病気になっちゃって。もう治らないかも…』と言いました。そしたら、友達が泣いてしまって(笑)。あわてて『ウソ、ウソ!!』と謝りました。本当にひどい話ですよね」
 ちなみに、作品の中で“あゆみ”は、心を落ち着かせるためにイモケンピを終始むしゃむしゃ食べる。戸田にとって、こうした存在のモノはあるのか。
「私も一度気に入るとそればかり食べる癖があるんです。最近だとホットケーキ。なんやかんやで半年ぐらい食べ続けています。家でも自分で作っているんですけど、キツネ色に焼くのが難しくて試行錯誤の毎日。でも、こんなにハマっていると言いながら、すぐにまた別のものにハマるんでしょうけどね(笑)」
 とはいえ好きなものが変わると、自分自身も変わった気がするという彼女。そういう意味では、作品ごとに周囲の環境が変わる役者という仕事も同様だろう。
「たしかに周囲にいるスタッフやキャストの方からは、毎回何かしらの影響を受けていますね。これまで様々な役を演じ、いろんな人との出会いがありました。こういう出会いを経て、この先30代に向けて自分自身がどう変化していくのかが、自分でも楽しみです」

戸田恵梨香 とだえりか 1988年兵庫県生まれ。映画、CM、舞台などでの活躍はもちろん、テレビドラマ「SPEC」など人気作品にも数多く出演。主演を務めた「エイプリルフールズ」は4月1日(水)全国ロードショー。
オフィシャルHPはhttp://www.flamme.co.jp/ErikaToda/

スタイリング/井阪恵(dynamic)
トップス、パンツ(ヴィクトリア ヴィクトリア ベッカム/ヴェルムーア)

CONTENTS