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小宮山雄飛

小宮山雄飛の〈音楽〉

ホフディランのボーカルにして渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。「TORANOMON LOUNGE」のプロデュース、食関連の番組レギュラーや雑誌連載も担当するなど幅広く活躍。
詳しくは「hoff.jp」へ!

音楽その14

2016.3.20

音楽を構成する要素として、音と同じく重要なのが『詞』ですね。
先日、トークショーでカジヒデキくんと話したのですが、作詞の大変さについて、ミュージシャン同士めちゃくちゃ意見が合いました。
作詞するためには、そもそもかなりのボキャブラリーがないとダメですし、しっかりストーリーを作る才能もなければいけません。
でも、そういう基本的なこととは別で、僕とカジくんが意気投合したのは「自分の言葉じゃないと歌えない」というポイントなんです。
内容的にどうとか、文章として成立しているかとは別に、その言葉が自分の言葉かどうかっていうのがすごく大きいのです。
例えばですが自分のことを「僕」と書くか「俺」か「私」か「自分」か「わて」か・・・。意味的には同じですし、聞く人からしたらどれでもしっくり来るかもしれませんが、歌う側としてはいつも使う自分の言葉じゃないと絶対に気持ち悪いんですよ。
あるいは地名が曲に入る場合に、その土地がほんとに自分の場所じゃないと、どうにも入れられないんですね。僕の「FREE STYLER」っていう曲に東京のいろんな地名が出てきますが、そういうのはやっぱりほんとに自分の行く街じゃないと入れられない。
「中目あたりうろついたら、アキバの店向かってまた・・・」
という部分が
「蒲田あたりうろついたら、戸塚の店向かってまた・・・」
だと、絶対歌えない(笑)。

しかし面白いことに、他人に歌詞を書くんだったら、全然書けるんです、自分の言葉じゃなくても。また、逆に他の人が書いた歌詞だったら、歌うことはできるんです。

例えばウルフルズの「ガッツだぜ!!」を歌うことは全然できるんですよカラオケでもステージでも、あるいは「ガッツだぜ!!」みたいな曲を誰かに依頼されて作ることも可能です。
でも自分で「ガッツだぜ!!」を作って自分で歌うことは絶対できない。やっぱりあれはトータスさんの言葉なんですよ。

それがね、すごく大まかなイメージとかって問題じゃなく、ほんとに1単語たりとも自分の言葉じゃないものは詞の中に入れられないんですよ。
言ってみれば、「ガッツ」って言葉が絶対に入らないわけです、僕の曲には。

だから自然と、よく僕の曲に出てくる単語とかがあって、場合によってはまた同じような歌詞だな・・なんて思われることもあると思うのですが、それはマンネリとかじゃなくて、自分の言葉を選んでいった結果なんですよね。

ちなみにそういう手法と別に、完全に架空のキャラクターやストーリーを作るっていう作詞法もあって、実は世の中のヒット曲ってむしろそっちのやり方で作詞されてるものの方が多いんですね。

ということで僕も次の作品あたりでは、そういう作り方も取り入れてみようかなと思っています。
あ、べつにすごいヒットを狙ってるとかではないですよ・・・。

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